vs庵野秀明!?80年代、漫画家の卵の物語 - アオイホノオ(1)



アオイホノオ(1)/島本和彦(Amazon)


ヤングサンデー不定期連載中の「アオイホノオ」、待望の単行本化ですよ!


この漫画の主人公は、大作家芸術大学に通う大学生・焔燃(ホノオモユル)。
吼えろペン」の炎尾燃とはおそらく別人?
この作品は実在の人物が作中に頻繁に登場します。
読み始めて一番最初に目に飛び込んでくるのは、



この物語はフィクションである。



デカデカと1ページに書かれたこの言葉。
そして次のページには「実在の人物・団体等の名称が一部登場するが、あくまでこの物語はフィクションである。」の文字。



この作品の舞台は80年代初頭、大阪府にある大作家芸術大学
そこに通うホノオは、漫画とアニメこそ最大の芸術・表現手段と信じる男。
ホノオ曰く「下手な漫画家が連載を持ち今の漫画界は甘い。いつでもデビューできる、だが今は青春を!」。
若さからか、過剰ともいえる自意識と自信を持っています。
将来的には漫画かアニメを作る人間になる、と将来の展望はあるが実際にはまだほとんど動き出していない青年。
それがこの漫画の主人公です。



主人公の焔燃は漫画のキャラですが、ホノオが読んでいる雑誌はサンデーやビックコミックと実在の雑誌であり連載作家も実在の作家。
同じ大学に通う学生も実在の人物で、物語は島本和彦先生のエピソードとダブるので読者としては主人公は島本和彦先生に見えてしまう。
この漫画はフィクションです。


ホノオは読者としての意見からか、かなり凄い発言もしています。
当時のサンデーのあだち充先生や高橋留美子先生の漫画を読んで「俺だけは認めてやろう!!」、と。
今の私達から見ればあだち先生や高橋先生は言うまでもなく大作家ですが、作中の80年代初頭当時のホノオのような立場ではそう感じることもあったかも知れません。
今を知るから楽しめる時間的な面白さ、上記の発言をホノオが本気で言っているのもギャグに見えてしまう面白さは、妙な説得力を持つ他作品の島本先生のセリフとはまた違った味がありますね。



ホノオの持つ自意識と自信は、大学で様々な人物との出会いで崩れ、悩ませていきます。
その1人、1話目から登場し異常なインパクトを持つ男。ゲンドウを思わせる姿勢で席に座るのは、そう庵野秀明氏です。
パラパラ漫画の課題でアニメさながらに動かし、映像の課題ではその発想による、かの庵野ウルトラで度肝を抜きます。
そうしてホノオは漫画の方へと進み出すのですが、あだち先生や高橋先生、細野不二彦先生の連載作品に衝撃を受け、大学でも自分より先を行く矢野健太郎氏に出会い打ちのめされます。


そうして少しずつ自分の漫画に向き合っていくことになるホノオ。
1巻時点ではまだ原稿用紙にワク線と表紙しか書いていない彼が、今後どういった漫画を描いていくのか。
青春真っ只中です。



舞台が80年代初頭ということで、ホノオのように当時の作品に触れていた人は懐かしさとともに楽しめるのでしょうね。
エヴァンゲリオン本放送世代は大学生時代の庵野秀明氏が登場というところでも楽しめるのでは。私もこの世代です。
また、登場する実在に人物は有名な人が多いのでオタクであればその点でも楽しめると思います。