何かしら殻を破った（と思う）百合作品をピックアップしてみた

友人とのやりとりで「殻を破った百合を読みたい」という話があったので、ちょっと考えてました。

百合作品の多くの割合を占めるのは、女子中高生の関係性や感情を描いたもの、”秘密の花園”的な作品だと言えます。
うん、大人と子供の間の少女の切ない想いや、触れるか触れないかで揺れ動く気持ちは百合の魅力のひとつです。

ここでいう”殻”はそういったイメージの、割合として大きいものを指すこととしましょう。
私は百合がジャンルとしてもっと盛り上がるには、多様性が必要だと考えています。
そういう意味で”殻を破った百合”というのも読みたいですし、面白いんじゃないかと思うのです。

あと、百合専門誌が増えてくれるといい。
でも専門誌が増えるには（売上が見込める）ファンが必要で、ファンが増えるには間口が広がる必要があって、間口を増やすには作品に多様性がいるんじゃないかなぁ。
つまり三竦みの形になるな。

…というわけで、何かしらの意味で”殻を破った百合作品”を挙げてみよう、と。
個人的にそう思う作品で、パッと思いついた作品をば。

マーメイドライン

マーメイドライン/金田一蓮十郎(Amazon)

真っ先に思い浮かんだのはこの作品でした。
金田一蓮十郎先生の「マーメイドライン」。

「女性と、”性同一性障害でビアン”」の百合を描いた「あゆみとあいか」は、百合として読むかどうかは分かれるところだろうけども、ひとつの可能性を見せてくれたと思います。
金田一先生は、ある意味でシビアなテーマもオブラートに包んで読みやすくするのが上手い。

　レビュー　→　「マーメイドライン」は百合の可能性の扉をひとつ開いたと思う。

乙女ケーキ

乙女ケーキ/タカハシマコ(Amazon)

「乙女ケーキ」収録の「タイガーリリー」は衝撃的でした。
「タイガーリリー」は、老婆2人を少女の姿で描いた作品。
彼女たちの中にある少女性を表していて、「百合は年齢に関係ない、少女性を描いているんだ」と感じさせてくれました。

タカハシマコ先生は可愛らしい少女の一方で、心の闇を漂わせた少女を描くのが上手い作家さんだと思います。

　関連　→　タカハシマコ「タイガーリリー」の、終わらない少女感覚【たまごまごごはん】

BLUE DROP

BLUE DROP/吉富昭仁(Amazon)

女性体のみで繁殖する異星人・アルメと地球人を描いたSFな世界観を持つ「BLUE DROP」。

電撃版は百合、チャンピオンRED版は性転換と、”性”がひとつのテーマな作品です。
その性の扱いはかなり特殊な一方で、短編は魅力のある百合なのが侮れません。
「BLUE DROP」の世界観でまだまだネタがあるみたいなので楽しみ。

　レビュー　→　倒錯しまくっているだけでなく、深い漫画だと思うんだ。　-　BLUE DROP〜天使の僕ら〜(1)

SCAPE-GOD

SCAPE-GOD/高遠るい(Amazon)

セカイ系の百合を読んだのは「SCAPE-GOD」が初めてでしたよ。
少女が神と出会ってどんどんスケールが拡大してくのは、まさにセカイ系。
出産とかするし！

”セカイ系SF百合バイオレンスアクション神伝奇”という悪ノリ全開な作品で、ネタが散りばめられていて楽しい漫画です。

　レビュー　→　パロディ満載のセカイ系百合漫画「SCAPE-GOD」

特徴的な百合作品たち

個人的に、上記4作品はけっこう革新的な百合だと思います。
百合の新しい扉を開いた感じで。

他にも特徴的な百合作品だと、

とある国の女王が日本で側女*1を探す「いおの様ファナティクス」
　→　レビュー

ヤマトナデシコ好きな外国人女将×抱きつかれると相撲技が発動する和服女将の夫婦が主役のドタバタコメディ「わさびアラモードっ!!」
　→　レビュー

下品な言葉を言う美女百合娘と、彼女が好きなタラシ男がメインのコメディ「僕の彼女は女子が好き」
　→　レビュー

百合カップルのいるキャバクラ漫画「パパイヤ軍団」
　→　レビュー

とかとか。

何にせよ、独特な百合作品が多いと楽しいことになると思うので、増えて欲しいですね。
もっと読みたいです。

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○「女装少年×少女」における百合を考えてみる

○「マーメイドライン」は百合の可能性の扉をひとつ開いたと思う。

○百合漫画における男キャラの立ち位置
○TS作品の中に百合を考えてみる
○「かしまし」に感じる百合要素を考えてみる

マーメイドライン (IDコミックス 百合姫コミックス)

乙女ケーキ (IDコミックス 百合姫コミックス)

BLUE DROP―吉富昭仁作品集 (電撃コミックス)

ScapeーGod (電撃コミックス)

*1:側室的な女性。自国に女の子ハーレムがあったり。