深遠すぎるワインの世界 - 神の雫(7)



神の雫(7)/オキモト・シュウ 原作:亜樹直(Amazon)


世界的ワイン評論家である神咲豊多香を父にもつ、神咲雫。
彼は父に反発しまともにワインを飲んだことはなかった。


だが、豊多香は膵臓癌により逝去する。
彼の遺言には、彼が選んだ12本のワイン「十二使徒」と幻のワイン「神の雫」を探し当てた者に遺産を相続する、とあった。


雫は、20億とも言われる神咲豊多香のワインコレクションを目当てに養子になっていた、ワイン評論家・遠峰一青と「神の雫」を巡る対決をする。



おおまかなストーリーはこんな感じのワイン漫画。
ポテンシャルを秘めているもののワインに関しては初心者の雫と、第一線で活躍するワイン評論家の遠峰の対決がメイン。
ですが、知識に関して素人同然の雫が、様々な人とワインとの出会いによって成長していく過程がまた面白い。
ワインの知識は全く無い私ですが、十二分に面白いと感じます。




主人公・神咲雫。
世界的ワイン評論家の神咲豊多香を父に持ち、ワインについて”知識以外”の英才教育を受けて育っています。
本人にはその自覚無し。
知識は初心者ですが、類稀な味覚と犬並みの嗅覚、表現力を持っています。
あるワインと、ソムリエ見習いの紫野原みやびとの出会いで人生観が変わりました。
太陽ビールに勤務、営業からワイン事業部へ転属。



遠峰一青。
「ワイン界のプリンス」と言われる評論家。

遺産目当てに養子縁組したキザメガネ。
お高く留まりやがって!
因縁的な設定がある模様。



この漫画の大きな目的は神咲豊多香の遺言状にある「十二使徒」と「神の雫」を探し当てること。
遺言に記述された表現をもとに13本のワインを一本ずつ当ててゆくのですが、6巻で「第一の使徒」を解答、7巻終盤で「第二の使徒」が出題されました。
出題→解答や次の出題の間には、雫が成長するためのエピソードや「使徒」を探し出す為のエピソードが複数展開されます。
このペースで行くともの凄い長い作品になりそうです。
普通に面白いからあまり気にしませんが、打ち切られたらどうなることやら。




紫野原みやび、ソムリエ見習いで太陽ビールワイン事業部のスタッフの一人。
メインの展開以外に気になるのが、みやびがソムリエになれるかどうか。
雫とのコンビで数多くのワインに触れる機会が増え、作中ではあまり描かれませんがこっそりソムリエ試験を受けている模様。
十二使徒よりも彼女のソムリエ試験のが気になって仕方が無い。
7巻のオビの煽り文は「ワインの魅力(エロス)を教えてやる」でしたが、色気はあるものの初期に比べてエロスは減った気がしないでもない。



3巻の時のエロス。
某カレー漫画くらいとは言わないまでも、もう少し増やして頂きたいところ。



料理漫画では美味いものを食べた時のリアクションがひとつの見所ですが、この漫画もリアクションが見所です。
雫をはじめ、ワインを飲んだ人は詩人のような言葉でワインを表現するのですが、本当に美味いワインは別。
本当に美味いワインは人に感動を与えるだけに留まらず、別世界に連れて行ってくれるようです。
過去のイメージを見せたり、森の中や城に連れて行ってくれたり、オーケストラを聞かせてくれたり。



ワインを飲んでペガサス。
名前を呼ばれてハッと我に返るあたり、相当にトリップできるらしい。
何かヤバイものでも入っているのでしょうか。


そんな表現も含めて、漫画としては非常に面白い。
対決が探し出す者同士の対決、表現力や諸々の勝負になっていたり、ワインが多くの人の人生観を変えまくったり。
巻末にワインに関する薀蓄のページもあったりと、ワインを扱う飲食店で働いている方は読んでおくと良いかもしれません。



この漫画を読んで、本当に美味いワインを飲んでみたいと思うのと同時に、ワインは深遠すぎるのでハマらないようにしようと思いましたよ。



神の雫(7) (モーニング KC)

神の雫(7) (モーニング KC)