珠玉の連作集、第2巻 - 群青学舎(2)



群青学舎(2)/入江亜季(Amazon)


大好きな作品のひとつ、「群青学舎」。
学舎をメインとした連作ですが、そのテーマに捕らわれすぎることなく、舞台も様々な青春物語を描いた作品となっています。
女性作家ならではの、純粋で瑞々しい逸品です。


それでは、2巻収録の各作品の感想を。
ちなみに、ビームの連載は基本的に追ってません。ご了承を。
最近は読んでますけどね。



■ニノンの恋  - Nion's love -


二人の叔母に「ブス」と言われている少女・ニノン。
名も知らぬ少年に恋をし、宛名も無く渡せない手紙を書き溜めているニノン。
魔女である叔母達にいたずらで、彼と周辺の人のポケットに転送された手紙。
そんな恋の話。


勇気が出せずに渡せなかった手紙を否応無く読まれることになり、それがキッカケで片想いの相手と会話し、彼は手紙から想いを読み取ってくれていた。
そうして、想いを伝えたいと手紙を書き渡す決心をするニノン。
この作品は”踏み出す勇気”がテーマなんじゃないかな。


魔法がすぐに解けかかっているのは、”真摯な気持ち”は取り繕わずとも伝わるということの表現なのかもしれません。



■時鐘  - Time-bell -


一線を越えることを拒む少女が、うさぎの死と人間の死を通じて成長する話。


動物は死ねば、ただの死体?
では、人間は?


「殺さんでも人は死ぬよ」と穴を掘る老教師の言葉は深く、それに関わった少女は行動を起こす、と。
後半、セリフが必要以上に無いのがまた良いですね。
深いなぁ。



■北の十剣  - Xenia and Reuther -


基本的に1話完結のこのシリーズにおいて、1巻の「白い火」以来の複数話の連作、5連作の作品。


国王の二人の王子、兄と兄に歪んだ感情を持つ弟。
国王の死とともに、反乱を起こす弟王子、逃げ延びた兄王子の娘と、それを追う弟王子の息子。
ファンタジーな世界観を舞台にした作品です。


群青学舎」で単行本になっている話の中で唯一、本編中に過去の回想と数年後が描かれる作品。
5話分のボリュームは伊達じゃありません。
各話の間を繋ぐ書下ろしの「after story」が、さらにキャラへの感情移入や掘り下げをしていて良いですね。


父親同士の確執があり、その立場に翻弄される二人の関係が見物です。
入江先生の作品に感じる、一部の少女漫画が持つ純文学的な良さが溢れた作品だと思います。



■彼の音楽  - His Music -


音楽が好き、でも上手く演奏ができず何をやってもダメ。
そんな小番少年の話。



思うように楽器を扱えない彼が、上手くいかないものの楽器に演奏に触れた時の幸福な顔が印象に残ります。


そして何より、後半の展開〜書き下ろしが秀逸すぎる。
上手く演奏に加われないことから、教室の外に出て練習から外れた小番少年。
自分のいない教室からの演奏練習の音楽に、「音楽が好きです」と涙しシンバルを鳴らす彼と、見限られたわけではなかったことに、泣いた。


後日談の「after story」まで含めてこその作品だと思うので、そこは是非読んで欲しいです。



■続 ピンク・チョコレート  - Pink chocolate Second-Act -


1巻収録の「ピンク・チョコレート」の後日談。
「ピンク・チョコレート」が凄い好きなエピソードなので、嬉しいなこれは!


学生時代に教授の惚れ薬の実験に付き合った都さんと春日くん。
彼らが付き合っているこの嬉しさ!
思わず、ニヤニヤしてしまうなぁ。


「メガネの研究者」というイメージが前面に出されていた都さんが、実はいいトコのお嬢様というギャップ!
それでいてイメージ通りの、麦わら帽子でりんご配る姿と他人への接し方に、どこか安心感を覚えます。
仕事が有能なのはイメージ通りですね。


春日くんの住んでいるアパートの人達が良すぎて、どことなくモラトリアムを感じさせる空間を羨ましく思うとともに、そこに住む春日誠一郎という人の人柄が垣間見える気がします。


「ピンク・チョコレート」と「続〜」の間の付き合う段階の話は書き下ろしにて。
あんなあっさりでいいのか!羨ましすぎる!


あとひとつだけ言わせてください。
都三也子は間違いなく美人です。性格的にも。



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