豆知識たっぷりの怖くない妖怪漫画 - 怪異いかさま博覧亭(1)



怪異いかさま博覧亭(1)/小竹田貴弘(Amazon)



タイトルを見て妖怪モノだと言うことと、オビの「安彦良和」の文字で表紙買い。
いや、表紙もほとんど確認せずに即決したので、読む直前まで安彦先生の新刊だと勘違いしていたのは秘密だ。
…表紙を良く見れば絵柄で推薦文だと気付くだろうに、私は相当に迂闊者のようです。


でも、面白かったし表紙買いして当たりだったので良し!



江戸時代の両国広小路の見世物小屋「博覧亭」のお話です。


主の榊は妖怪馬鹿で、見世物は胡散臭い妖怪展示。
というか、大きい板に血が付いていて「大イタチ」とかないだろう!
そんなこんなで、博覧亭はいつも閑古鳥が鳴いてます。
主な収入は内職の傘張り。


そんな博覧亭の住人(見世物小屋に住居も一緒にくっ付いてる)は一癖ある人達ばかりです。
榊以外は、榊の幼馴染で貧乏絵師の蓮花、番頭の柏、家事担当の蓬、忍っ娘の八手、ペットで非常食な獺(かわうそ)のゴマ。


普通に妖怪も混じっていて、1話目早々から普通のセリフで妖怪とバラしてるし、妖怪だからといって特別扱いされていない関係が個人的には好きだなぁ。
榊が妖怪馬鹿のクセに、可愛いものは妖怪と認めないだけというのもありますが。



妖怪漫画と言ってもおどろおどろしさはなく、ノリツッコミが多くてノリもテンポも良いコメディ。
榊、蓮花、柏の我が強いツッコミ役が話のメインになることが多いです。
で、そんなコメディノリに妖怪を絡ませた展開。
一話完結形式の漫画で、ギャグ漫画なオチの他に心温まるちょっといい話なんかもあります。



各話の間に書き下ろしで「江戸うんちく」があり、江戸時代や妖怪の豆知識が解説されています。
その知識に基づいて描かれている為、舞台となっている江戸時代の両国広小路の探訪モノとしての側面も持っているのが面白いところ。


「読むのにやたら時間がかかるな〜」と思ったら、コマ数が多くて情報が詰め込まれてるんですね。
それが話数が進むと、コマ割が整理されて読みやすくなってきているとのが見て取れます。
その分、情報量が少なくなっているのは仕方がないか。
まぁ、必要以上に詰め込んでもアレですが。



気になったのが、第一幕〜第六幕の後に序幕として読切分が収録されているのですが、普通に「序幕→第一幕〜」と続いており、それに基づいたセリフがあったりして戸惑いました。
序幕で明らかになっている情報(割と重要だと思う)を、2話目あたりの書き文字でいきなり読んでも戸惑うってば。
なので、ページ順ではなく後ろの方の序幕から読むのをオススメします。



この漫画の妖怪は怖くありません。
”妖しい”のは仕事の方。
タイトルからして「いかさま」ですし、出てくる職業はどちらかと言えばアングラ・アウトロー寄り。
それでいてコメディ色が強いのが、面白さのひとつです。


二人分の「博覧亭に来た経緯」は1巻に収録されていますが、今後、他のキャラの過去話なんかも期待できそうですね。



怪異いかさま博覧亭 1巻 (IDコミックス REXコミックス)

怪異いかさま博覧亭 1巻 (IDコミックス REXコミックス)