吉富昭仁の新刊は”生と死の間”の物語 - ツレビト(1)



ツレビト(1)/吉富昭仁(Amazon)


吉富昭仁先生の「ツレビト」の1巻が発売になりました。
個人的に吉富昭仁漫画のイメージは不安定な世界観でのダークめな話。
この漫画はそのイメージに近いかと。


何の前情報も無しに読んだ方が衝撃が強く、楽しめると思います。
思いますが、ネタバレ無しで感想は書けません、この漫画。



※以下、ネタバレ有




不慮の事故で死亡した主人公は生と死の間の場所で、ツレビトに出会う。
自分の死を受け入れられない主人公は幼馴染の側にいたいという思いから死にたくないと願うが、死んだ人間は生き返らない。
死の世界に行かずに”間”に留まる方法…ツレビトになること。


ツレビトは、死んだ人間。
死んで尚、死の世界へ行くことを拒み”生と死の間”に留まる魂。
死んだ人間は誰かに”門”まで導かれなければ本当の死を迎えることができません。
一定時間以上、”門”まで行かずに留まると自我を無くし”間”を漂うだけの存在”バケビト”になってしまいます。
つまり、他の誰かを”門”まで導くことで”間”に留まれます。
そうやって”間”に留まっている人間の魂が”ツレビト”。



生きてはいないのに、完全に死んでもいない状態。
”間”に残るため、他の誰かを犠牲とする。
他の動物と異なり、人間だけは自分一人では”門”に辿り着けない。
なんとも深い設定と、面白い展開で魅せてくれます。



1巻の段階では、”間”とツレビトやバケビトといった設定の提示と次の話への導入。
主人公が初めて”門”へと導くバケビトが生前に自分の行動を見ていたという。
連載は読んでないので、先が気になりますね。
まさかストーカーなんてオチはないとは思うけども。



少し思ったことを。


主人公の念じる力の強さは現世への未練の強さだけじゃないよなぁ。主人公だし。
ツレビトとして長く”間”に留まることで、自分を忘れられるのを恐れる主人公が一番忘れられたくない幼馴染から主人公のことが薄れていく展開がありそうな気がする。
ツレビトの一人・センドウが同じくツレビトのアヤにだけ、”様”付けなのが気になる。
巨大なバケビトも彼の能力だろうから、特別な存在だよなぁ。
”間”には”時間と空間の概念が無い”からいつの時代の人間だったかわからない可能性もあるし。
そうすると、巨大な主人公の幻覚(?)はアヤの力だろうか?それとも主人公の力?



先が気になる面白い漫画です。



ツレビト 1 (マガジンZコミックス)

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