遠距離恋愛を軸にした大学恋愛漫画 - 夢のアトサキ



夢のアトサキ/やまむらはじめ(Amazon)


アワーズ不定期連載されていた「夢のアトサキ」。
もう少し続いて欲しかったとも思いますが、単行本で読むと1冊分という長さは冗長でなく上手くまとまってますね。



この漫画は、東京からバイクで8時間程離れたある大学のある研究会の生徒の恋愛を描いた漫画。
やまむらはじめ先生の作品は独特の雰囲気を持っていて、その雰囲気にある気だるさが大学生の恋愛に合っています。
気だるくノスタルジックな空気に「あの頃、このくらいの年齢の時にこういう恋愛をしたかった」と思わせ、戻らない過去への懐かしさと憧れを感じさせられる。



美大の入試に失敗し挫折した青年・乙部也寸志を主人公とし、研究会のメンバーの恋愛模様を描いていきます。
也寸志には遠距離恋愛の彼女がおり、1話での話を2〜4話で別のキャラの話を描き、再び5話から最終話まで也寸志メインとなる展開は、主人公以外のメンバーの掘り下げとともに中々会えない遠距離恋愛らしさでもあり良いですね。


挫折して絵を辞めて腐っていた也寸志。絵を好かれ付き合い、さらに遠距離恋愛ともなれば上手くいかない部分もあるわけで。
何に関してもそうですが、本当に凄いと思えるものに出逢った時は影響を受け触発されるもの。也寸志も憧れのイラストレーターの絵を生で見たことで、また絵を描く決心をします。
何らかのキッカケで魂を揺さぶられ、それで動きだせるならそれは本当にその人にとって好きで大切なこと。
也寸志が絵を描く決心をしてすぐに取った行動が、遠距離恋愛中の彼女・阿耶にその決心を伝えに会いに行くことだったのがまた良いではないですか。
それも方法や時間も考えずにただ無我夢中で会いに行くのが良くて、もうこの1話の段階で私はこの漫画が好きです。



人によって恋愛以上に大切なことがあったり、立場やら、相手には相手の人間関係があったりしますが、好きなものはどうしようもなく好きなんですよね。
付き合っていく距離は大切にしつつも、時には突っ走る情熱も必要だと、この漫画のキャラたちを見て改めて思うのでした。
そういう”熱さ”なんかは周りにも伝播しますしね。そして前に進み続けるしかないんですよね、何事も。



キャラ的には、一番の先輩でありながら中学生に見られる外見で男にとってナチュラルキラーな都緒里先輩が堪らんですね。
無自覚に男を振り回す合法ロリとか反則だ。