おだやかでかわいくて、やわらかな恋 - 楽園の条件



楽園の条件/森島明子(Amazon)


森島明子先生のかわいらしい珠玉の百合作品を収録したコミックスが発売されましたよ!


森島先生の描く女の子は社会人でも年齢に関係なくやわらかくかわいらしく、彼女たちが織り成す関係も同様に、やわらかくてかわいらしいおだやかな百合。
あとがきの「脳内百合×ユリ見聞録」でご本人が「女の子を描くときのイメージ…可愛くてやわらかくておいしくていい香り」「生きがいは女子をやわらかく美味しそうに描くこと!」と書かれていて非常に納得。
うん、百合はやわらかくてふわふわで可愛くてキラキラしていて…
うわぁ、ニヤニヤが止まらなくてジタバタしてしまう…!
ピュアな感情だけが百合じゃないけど、ピュアな方がキラキラと輝いているものです。


この単行本では百合姫に掲載された作品に2編の描き下ろしを加えた、8編を収録。
どれも良い百合作品ですが、中でも描き下ろし追加で続き物になっている2作品の感想を。


楽園の条件

星の向こうがわ

木漏れ日の中で(描き下ろし)


表題作「楽園の条件」を含むシリーズ。
この単行本の表紙もここから。
そういえば、百合姫レーベルのコミックスでこの単行本が一番露出が多く、また抱き合っているので距離が近い。良いなぁ。



26歳・OLの伊藤沙里奈とフリーライターの鷹見澄のお話。


計画通りの毎日をキッチリ過ごす沙里奈の家には、たまにフラッと友人の澄が来ます。
澄はトラベルバッグとノートパソコンで世界を渡り歩く、まさに自由なフリーライター
沙里奈にとっては彼女の来訪だけが計画にないこと。


お互いにお互いが好きで、キスをする友達以上の関係。
でも、キスまでの恋人未満の関係。
”好き”。それだけで充分なお互いに自由な関係。それなのに心にモヤモヤしたものを感じる。


”自由でいられること”。
それはお互いを信頼していて自分を出すこともできるけれど、いつ逢えるかもわからない、いつ居なくなるかもわからない、もう逢えないかもしれない、そんな確かなものがない不安も同時にあるんですよね。
だから確かなものを欲しがる。
でも確かで変わらないものは、縛るものでもあり、自由ではないんですよね。
本当の自由は変わっていくことで、”好き”の気持ちもどんどん変わってもっともっと好きになっていければいい。
もっと一緒にいたい。もっと色々なところへ行って、色んなものをみたい、感じたい。


この2人はとてもいい関係です。一緒に進んで、好きを大好きにもっともっと変えていけるはず。



描き下ろしの「木漏れ日の中で」は、沙里奈がマルタまで澄について行ったお話。
これがニヤニヤしすぎてヤバイ!


一線を越えたあとの沙里奈が、自分でもウザいと思うくらいに澄にベタベタ。
そんな自分に反省しつつも、どんどん澄を好きになっていっている沙里奈と、ベタベタくっついてくる沙里奈に戸惑いながらもドキドキしてる澄も可愛い。
長年の付き合いがあっても、いやあるからこそ、今まで見たことがない新しい一面や表情が嬉しく、また少し近づいて好きになっていくんですよね。
そうやって、おだやかでゆったりした関係。いいなぁ。


20娘×30乙女

「攻」←→「守」(描き下ろし)


タイトルの通りのカップリングの百合です。
20歳の予備校生に告白され、付き合うことにした30歳の予備校講師のお話。


一緒にいて少しずつ情が沸いていくタイプの30歳の圭子、若くて可愛くてキラキラツヤツヤした20歳の笑美に好かれ、若くピチピチした笑美に釣り合うように肌も身体もキレイにしよう!と頑張るわけです。
10歳差という年齢差は意識しているものの、そんなの関係ないレベルまで笑美に「キレイに見せたい、キレイと思われたい!」という気持ちが圭子の見えていて非常にニヤニヤしますね。


笑美は可愛い恋する”娘”ですが、圭子の方は完全に恋する”乙女”で。
笑美は普通に可愛らしい娘だけど、圭子にはとてつもなくキラキラ輝いて見えるという、まさに恋した相手は何倍も輝いて見える補正がかかりまくり。
恋すれば年齢なんて関係ないんですよ!
好きな相手は他の誰よりも可愛くみえるし、恋しているからこそより自分を良く見せたいと頑張る。
切なさも胸の苦しさも含めて、特有の心の充足感もありますし、良いことだらけです。うん。
あとは暴走しすぎないように気をつけて、自分を律するくらい。
踏み込むべきところと、抑えるべきところの判断が難しいけどそれもまた一興ということで。そのあたりが描き下ろしで描かれていて良いです。



百合でもBLでも「健気な年下が告白して変わらず健気に好きでいてくれて、余裕を見せつつも時に戸惑い気付いたらメロメロになっていた年上」という年上受が好きなのですが、どうでしょうか。
惚れた弱みといいますが、惚れられて好きになって弱くなるのも良いと思うのですよ。

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アキココット
森島明子先生公式サイト


楽園の条件 (IDコミックス 百合姫コミックス)

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