言えない「好き」、言うのが遅かった「好き」の切なさ - 東京マーブルチョコレート



東京マーブルチョコレート/谷川史子 原作:プロダクションI.G(Amazon)


谷川史子先生がキャラクターデザインをされているアニメ「東京マーブルチョコレート」の漫画版です。


アニメは男の子と女の子それぞれの視点で進む2種類が作られている恋愛もののようで、漫画版はアニメ版より前の彼ら2人の物語を描いたオリジナルストーリー。
私はアニメ版は見てないのですが、アニメ版より前の話なので観ていなくとも全く問題なくこの漫画版は面白くて、読んでアニメの方も観てみたいと思いましたよ。


この漫画版はチヅルと悠大のそれぞれのお話が1篇ずつを収録。
アニメ本編がこの2人の恋愛ものであることから、アニメ前夜である漫画版は切ない話となっています。
でも切ないだけじゃない、ハートフルなお話なのは谷川先生の漫画ですね。

Side.C

チヅル編は、幼馴染の和臣と2人で大学受験で上京しているお話。


2人は兄妹のような幼馴染で、和臣には東京の大学に進学した年上の彼女がいます。
そして、チヅルは和臣に片思い。
お約束とも言えますが、せ、切ねぇ…


自分が好きな男の子には彼女がいて、でも好きで、一緒にいたいし自分に振り向いて欲しい。
うわー、切ない!
受験を終え、和臣の彼女から連絡が来るまで一緒に遊ぶことになって、自分を見て欲しい振り向いて欲しいと願う、この片思いの切なさ。
遊んでいて楽しいのに、彼女のことが脳裏に浮かんで、彼女からの連絡を気にしている好きな男の子の姿がそこにある。
報われないと頭で解っているだけに、好きだと言ってしまえば友達でもいられないから、普通の片思いよりもキツイでしょうね。
しかもその彼女がいい人で、自分のことを人として好きなんて、自分の中に湧き出るイヤな感情の向かう先がなくて切なすぎます。

Side.Y

悠大編は、大学生の悠大のもとに届いた同窓会のお知らせから思い出される高校時代の後悔の話。


同じ部の男の子・辻井と女の子・比呂、自分を入れて仲の良い3人。
辻井は多分、比呂のことが好き。
自分も比呂のことが、好き。
でも3人でいるこの居心地の良い関係を壊したくない。


そうなんですよね。
好きな人と2人でも仲が良くて、その関係が壊れるのが怖くて告白できないというのはありますが、こんな3人の関係だと尚のこと。
悠大の性格的なものもあるんですが、比呂と2人になって告白のチャンスがあっても、関係が崩れるのが怖くて、言えない。
好きな相手に「好きな子いないの?」と聞かれるのももうね、切ないなんてもんじゃありません。

共通することは

どちらの話にも共通して言えるのは、「”好き”と言える機会はあったのに言えなかったことに対する後悔」
好きなのに好きだからこそ言えないというのはありますし、時間が過ぎて、好きなのに好きと言えなくなってしまうのはもっとツライ。
言えなくなる前に言うのが、必ずしも良いとは言えませんが、言えなくて後悔するよりも言った方が私は良いと思っています。
切なさが続いて、積もり積もると毒にもなると思うのです。苦しい。


この漫画の良さは、その「タイミングを逃して、遅くなってしまった”好き”」に救いがあって、次の恋愛に向き合えるようなそんな切なさ
学生の頃を思い出すような心地の良い切なさがあります。