まじめにゆっくり育まれる少年たちの恋 - 同級生



同級生/中村明日美子(Amazon)


中村明日美子先生のBL新刊です。
「コペルニクスの呼吸」「Jの総て」も少年と少年の関係性を話のメインに据えた作品でしたが、この「同級生」中村明日美子先生の初のBL誌での作品とのことです。


「同級生」のテーマはオビにもある”まじめにゆっくり、恋をしよう。”
あとがきで中村先生が「ベタでもいい王道でもいい」「うぶでおぼこくてじれったいそういう話」と書かれているように、思春期のピュアな恋愛ものです。
どうしたらいいかわからないけど、どうしようもなく好きで仕方ないような。


そのためエロティクス・エフに掲載されていた作品が持つ色気が漂う雰囲気とは違い、少年の恋愛に透明感を感じます。
いや、中村先生の描く人物そのものに色気があると思うんですけどね。
目とか凄いいやらしい。いい意味で。
なもんで、思春期という作風の透明感とキャラの持つ色気が、妙にドキッとさせてくれる。



作品の舞台はある男子校。
合唱祭の練習で隣のメガネの男子が口パクで歌っていないことに気付いた草壁。
彼・佐条利人は優等生で「おうたなんてうたってられないか」と思わせるような冷たさを持っています。
しかし、佐条が歌の自主練を陰でしているところに遭遇してしまってからその印象は変わる。
単純にメガネの度が合ってなくて黒板が見えなかっただけの模様。
そんな成り行きで合唱祭まで佐条の練習に付き合うことにした草壁でした。


佐条が傍目からみるような人を寄せ付けないような雰囲気とは違って、どこか抜けてて繊細なのがギャップもあって可愛らしいです。
草壁はまぁ、楽天的でお気楽なおバカで見たまんまの人懐こさで佐条と仲良くなっていくんですが、「佐条が歌を頑張っているのは、先生のため?」という不安もあるのです。
で、本番でそれが溢れてわーっとなっちゃう。
切なさが積もり積もれば涙も出てきちゃうよなぁ。
ちなみに先生は男性です。



この先の2話以降も良いですよ。
草壁の友達曰く「佐条ってジャンル違うじゃん 俺らと」の言葉のようにタイプの違う2人。
だからこその不安と気持ちのすれ違いが、切ない。
知らない相手のことは勿論のこと、自分のことすら言っていいのかわかならくなったり。
好きだから知りたい。でも好きだから言えない。そんな不安。
そういう気持ちの絡み方がBLの醍醐味のひとつだと思います。



個人的にツボったセリフは「録音した。心に録音した。いつでも再生可能」
うわぁ、恋してたらあるなぁ、これ。
そしてこんなセリフにどうしようもなく思春期を感じるのでした。いいなぁ。

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中村明日美子オフィシャルサイト

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