新米弁護士のハートフル弁護士漫画 - そこをなんとか(1)
そこをなんとか(1)/麻生みこと 監修:片瀬小波(Amazon)
司法制度改革による2006年の新司法試験の合格率は約50%。
それに伴う弁護士就職難時代で求職に奮闘している改世楽子(らっこ)を主人公とした弁護士漫画です。
や、らっこはちゃんと小さいながらも弁護士事務所に就職します。
私なんかは、弁護士といえば裁判、裁判といえば殺人事件などの凶悪犯罪と刑事裁判、と連想してしまいます。
事件の調査と証拠集め、弁護側と検察側の駆け引き渦巻く法廷バトル…って逆転裁判の刷り込みじゃないか。我ながら短絡思考すぎる。
裁判をテーマにした漫画はチラホラあるのですが、どれもが刑事裁判を描いているわけではありません。
民事裁判や「裁判を傍聴に行こう!」という趣旨の実録漫画なんかも多いです。
この「そこをなんとか」も刑事裁判をメインとした漫画ではありません。
主人公のらっこが新米弁護士ということもあって、殺人事件などのサスペンスで出てきそうな事件の裁判は受け持ちません。
依頼はケンカの傷害、離婚、遺産相続などで、初めて1人でする国選弁護から少しずつ成長して行く形。1話目は弁護士事務所に就職してませんし。
専門用語は解説が付きますし、主人公が新米ということで法律や裁判の知識がなくとも十分に楽しめる漫画となっています。
先輩弁護士の通じてより深い部分は描かれたりしますし、合間合間にある麻生先生の傍聴日記も面白いです。
そして何より、実家が貧乏で「弁護士になれば儲かる」と弁護士を目指したらっこがタフで人情に溢れた女性なのが良いです。
不自由のない暮らしをしてきていないから、育った環境からヒネてしまった被告人との共感は読んでいてすんなり納得できましたよ。
結果として報酬よりも依頼人のことを考えての行動が、案件に関わった人をより良い方向へ導く温かさ。
法廷だけが、裁判だけが弁護士の仕事の場じゃない。人と人の関わりあい、そこから生じたトラブルを収める。そんなハートフルな弁護士漫画です。
1話で1案件、な1話完結形式なのも読みやすくて良いなぁ。
- 作者: 麻生みこと
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2008/03/05
- メディア: コミック
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