「ARIA」完結巻。変わった先にある今を大切に。



ARIA(12)/天野こずえ(Amazon)


「ARIA」の最終巻、グランドフィナーレです。
癒される漫画として名高い「ARIA」。私も大いに癒されていました。
癒されるだけでなくて、胸に訴えかけてくる清々しい思いがある漫画でした。
そんな好きな漫画の最終巻、最終話。やっぱり目にジワッとくるものがありましたよ。


ゆったりとした癒される漫画。
それでも、だからこそ終盤の”変化”が大きく感じられて、変わらないものはないんだなぁ、と当たり前のことが切なくなりました。

変化していく物語

11巻でアリスちゃんの昇格と大きな変化があったわけですが、続くNavigation56は2体の人形を持ったお爺さんが変化について語る話から。
12巻に最初に収録されている話が変化について、というのがこれから先は大きな変化が訪れることを意味しているようで切ないやら、上手い構成だなと思わずにいられないやら。


お爺さんは、微笑む人形と哀しむ人形が変わらない想いを抱き続けることと、人間は変わり続けることを対比させて話しています。
変わらない表情の人形がモラトリアムのメタファーのようで、変わり続ける人間の話は「そこから旅立って一人前になっていかなくてはならない」と言っているように感じます。
その話を聞いてるのがプリマを目指している灯里で、ぱかりと開いた匣はそれを気付かされたんじゃないかなぁ。
また、この「ARIA」という作品が読者にとってのモラトリアムで、この作品が終わりに近づいているとも言っているようで切なくなります。

藍華、アリス

次の話は、藍華が後輩が先にプリマになってショックを受けているんじゃないかと晃さんが気にかける話。
一人先に行った仲間を目の当たりにして落ち込むでもに嫉妬するでもなく、そういう気持ちがあったとしても、負けてられないと前に進む原動力にする藍華が良いですね。
晃さんの優しさが見れたのも良かったですが、晃さんが藍華に救われている部分もあるよなぁ、と感じられる話でした。



一人先にプリマになったアリスちゃんは変化の渦中の人なので、日常は一変。
今までいた居心地の良いところから一人出て、多忙な日常でふと灯里と藍華に会ってないことに気付いて淋しくなる。会うきっかけがない。
でも、きっかけなんて無くてもいいんですよね。会いたいっていう気持ちがあって、会う時間さえあれば。
立ち位置が変わって日常が変わっても、一緒に過ごしてきた大切な人との関係なんてそれだけじゃそうそう変わらないもんです。
会いに行くのに少し動き出す力がいるかもしれないけれど、変化していく中でも変わらないものはあるんですよね。

灯里、変わっていく先にある今

灯里の成長に伴ってARIAカンパニーも変わっていきます。
成長して一人前になるというのは、ある種の巣立ちでもあります。


居心地の良い場所にはずっといたいものだけれど、人は歳をとっていくしずっと全く同じなものなんてない。
変わるということは前に進んでいることでもあって、それは時に別れや痛みを伴うものだけど、進まなければ出会うことのないものや、変わらずある気持ちや関係もあるんですよね。
変わらないものを大切にして、進んだ先にある今と楽しもうと感じさせてくれる良い最終巻でした。
楽しい日常が幸せであり癒しなんですよ。


ずっと灯里が送っていたメールの送り先と、最終話の最後はその先にある未来を感じられるものでちょっと鳥肌が立ちましたよ。


アリシアさんの件は、私の脳内で相手は晃さんと思い込むことにしました。
だって相手は出てきてないし、男だと明示されてないもの!…百合オタでごめんなさい。

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