「女装少年×少女」における百合を考えてみる

前の記事『「男装少女×少女」における百合を考えてみる』に関連して、「女装少年×少女」の展開の中に百合を感じられるパターンを考えてみます。


私は百合オタなので特になんですが、基本的に「女装少年×少女」は百合ではなく男女ものだと認識しています。
「男装少女×少女」で百合と感じるパターンが多いのに近い感じでしょうか。



前の記事同様に、「少年」、「少女」という書き方をしますが大人の男女も含み、性同一性障害のパターンも除いて考えています。
また、あくまでフィクションとしての百合に対しての考えですのでご了承ください。
「百合と感じるか」どうかと作品の面白さとは別ものです。


女装少年×少女

「女装をしている少年と少女」の恋愛もので、百合と感じられるものを考えてみたいと思います。


少女が女装している少年と認識しているならば、それは間違うことなきヘテロの恋愛ものです。
なのでやはり、「恋した相手の”本来の性別”を認識していない」パターンを考えていきます。
考えるパターンは基本的に「男装少女×少女」の場合と同じで、明らかになった時どうなのか、読者に明示されているか、どちら視点で進むのか、をポイントに考えてみます。


女装少年×少女 (少年側視点)


少年が主人公で、女装せざるを得ない何らかの理由があり、正体を公にはできないパターン。
「乙女はお姉さま(ボク)に恋してる」なんかがこのパターンですね。
「まりあ†ほりっく」もある意味でこのパターンでしょうか。*1


このパターンは「主人公が男の子だとバレないように生活する」ことがキモとなります。
周りの女の子に慕われても、バレないようにすることを優先し、主人公が恋愛感情を抱く相手となる女の子にはいずれバレるというのが王道。そんなラブコメ
主人公は男として女の子を意識し、女の子の方は「主人公を女の子として好きになったのち、男の子の主人公を好きになる」か「主人公が男の子だと知った後で好きになる」形になると思います。
男女ものですね。


メインの視点が身も心も男性である少年のもので、彼の恋愛となればヘテロの恋愛もので当然と言えます。

女装少年×少女 (少女側視点、女装を読者には明示)


相手が少年だと知らない、少女の視点で進むパターン。
彼女の感情は「少女→少女」ですが、読者は思われ人が女装した少年であると知っています。


作品全体に対する読者の認識は男女の恋愛ものですが、視点の主である少女の感情のその部分だけ見れば百合と言えなくもない。


主人公は男側ですが、金田一蓮十郎先生の「ニコイチ」なんかはそう。
主人公の真琴はある事情から会社以外では女装して生活をしていて、片想いの女性である菜摘さんが女装姿の方(須真子)を好きになった、と。
男だとバレるまでの、菜摘さんの須真子に対する恋心は「同性に好きになってしまった」という葛藤を含めて本気のものでした。
あの感情は私にとっては紛れも無く百合です。


とはいえ、このパターンだと読者は男女ものだとわかっているので「百合と言える感情があるのに、百合は物語の演出のひとつで、この作品そのものは百合とは言えない」となるんじゃなかろうか。
男女の恋愛ものやBLに比べて百合作品は少ないだけに、百合好きにはガッカリさせられたと感じる人も多くなると思います。
カレーだと思って食べたらハヤシライスだったとか、肉まんだと思ってたらあんまんだったとか。うん、例えが悪い。

女装少年×少女 (少女側視点、女装を読者にも伏せてある)


さて、読者にも女装少年だと明かされていない場合です。
読者には両方ともが少女に見える為、百合に見えます。
そしてラストで女装した少年だと判明する形。途中で伏線は張られるかもしれません。


このパターンは読者にはショックが大きいと思われます。百合オタにとってはラストでどん底に叩き落されたようなもの。
前に「ヒロインの一人が実は男だった」とラスト付近で判明するエロゲの記事を見た記憶があるのですが、それと同じような感覚ですね。
「男女の恋愛ものだと思っていたら、最後の最後で実は女装した男でした」というのは、「こんな可愛い子が女の子のはずない」とは全く別だと思うのですよ。
知っていて読むのと、知らないで読むのとでは大きく意味合いが変わってきます。


ただ、このパターンでも性別が判明するまでの少女の恋心は百合です。
「男だと判ってショックを受けて失恋」という終わり方なら悲恋の百合…といえるのかな?
性別問わず、ラストまで伏せ続けている作品を見たことがないので何とも言えない部分はあるのですが、きっと裏切られた感じになるんだろうなぁ。


こういうパターンでも本当の性別を知った上だったり、再読だったりでは印象が変わるので、終わり方によっては百合と言えなくも無いかもしれない。
とはいえ、個人的に百合好きとしてはあまり読みたい演出ではないです。

女装少年が相手の時点で、大手を振って百合とは感じられない

女装少年はそのまま紛れも無く男性です。
なので外見上は女の子同士であっても男女ものであり、百合ではなく”女装”というジャンルだと思うのです。
ただ、少女が相手を”女装少年”ではなく”少女”として見ているその感情に関しては百合と言えるかもしれません。


*1:主人公のかなこは鞠也の女装を知っていて口外できない形。2人とも主人公ですがギャグ要員に見えるんだよなぁ。サブキャラで良い百合があります。