やりたいことはあるか?同室の女子大生2人の青春漫画 - ネムルバカ



ネムルバカ/石黒正数(Amazon)


女子寮で同室の先輩と後輩、2人の大学生を描いた青春漫画「ネムルバカ」。


石黒正数先生の面白さのひとつであるウィットに富んだネタをおりまぜつつも、ギャグよりもストーリーに重きを置かれている感がこの作品にはあります。
今を何となく過ごしつつも将来のことに不安を抱いている大学生に、ノーテンキさよりもシビアさを感じるからだと思います。



1話目は恋の話、2話目はバイトの話、と序盤こそ大学生のダラダラした生活を描いていますが、物語は中盤で転換期を迎えます。
自分が心地良い循環の中にいることを認識し、「やりたいことのある人」と「やりたいことがない人」の話題が出たところが折り返し地点ですね。
その先は、先輩のルカが自分のやりたいこと「アーティスト/ヴォーカリスト」として進み、進んでいく先輩を見て焦燥感に苛まれる入巣を描く形になっていきます。ギャグは少なくなっていく。
ストーリー展開の都合ではありますが、学生の日々より仕事に関わっている時の方がギャグが少ないのはちょっと面白い。



ルカはバンドのヴォーカルとしてやりたいことを頑張っているものの、壁を感じ思うように上手くいかず思い悩みます。
入巣は”やりたいこと”がわからず、自分の決めた道を突き進むルカが遠く感じるわけです。このままじゃいけない、と焦りを感じるけれど何がしたいのか、何ができるのかわからない。


ただ、やりたいことがあって楽しんでいる人で、”やりたいこと=仕事”として考えるとダメなパターンも描いているのが面白いところ。
駄目な循環”駄サイクル”の話で、内輪だけで褒め合い、広く評価されたり努力したりをしない馴れ合いのサイクルのこと。
確かに仕事・目的としての”やりたいこと”であるなら、それは先に進めないでしょうね。
こと、趣味としてなら必ずしもダメとは言い切れないけれども。


また、ルカにチャンスが舞い込んできて売れていくのですが、それは彼女が”本当にやりたいこと”とはズレがある。
同じ方向性の分野であっても、”成功”と”自分が楽しめること・やりたいこと”にはズレが生じることもあるんですよね。
それでも、用意されたレールに載った成功よりも、悩みながらもやりたいことをしている方が輝いている、というのも間違いではないひとつの形。
色々と感じさせられることの多い漫画です。



ところで、ルカと入巣の関係に百合を感じるのですがどうでしょう。
ルカが入巣の思いもよらない言動に触発されてたり、目的がなく日々を生活している入巣はルカに甘えがちだったり。
お互いにお互いが支えになってる部分があると思うのですよ。馴れ合いではなくて。