水の惑星の優しい物語 - 碧水惑星年代記



碧水惑星年代記/大石まさる(Amazon)


宇宙開発が進む近未来でありながら田舎を始めとした懐かしい風景や、一部の建物が水没するくらい上がった水面がキラキラと光を反射する地球が美しい「水惑星年代記」シリーズ。
連作読切5巻目、「碧水惑星年代記」です。
今巻も煌いていて、優しい気持ちにさせてくれます。


この漫画は、人にも、自然にも、この水の惑星だけじゃなくて宇宙全てに対して愛が溢れています。
だから読んでいて胸を締め付けるし、優しく穏やかな気持ちにさせてくれる。前に進む活力をくれる。


今巻の「碧」では本編6本と「みずわくせいえほん」を収録。
水惑星年代記」が好き過ぎて感想が長くなりすぎるので、全後半に分けて感想を。

どってん☆

義理の姉と妹の住む家に戻ってきた男の子・ヨウと彼女らのお話。


ヨウが中学生の頃に親が再婚して、義理の姉・澪と妹・ナツキができます。
留守がちな両親に代わって面倒をみてくれる姉を好きになり、その気持ちを止められなくなるのを怖れて海外の高校〜大学へと行ったヨウ。


逃げ出して、帰ってきて再開した澪はやっぱり魅力的で、離れて募る想いっていうのはあるものです。
戻ってからもどこか逃げていたものの、離れるにしても「想いを告よう」と決めてからなのは男として成長した証でしょうね。
とはいえ、澪の話をちゃんと聞かずに離れたのはいっぱいいっぱいだったからなのかな。


あるものを発見して、目的ができてからヨウの行動力は見違えるようで、まさに男の子だなぁ。
突き進む活力となる目的は大切なもので、この話の終わり方はニヤけて仕方がないものでしたよ。


そして、ヨウが澪を好きだと知っていて、ヨウに恋するナツキが切ない。
あとはキアランが出てきてニヤリとします。ブラック家は度々出てきて脇役でも良い味を出してますね。

アル be レオ

海が好きで大好きで、将来は海洋牧場の牧童になると決めているレオ。
海で父と母を亡くし、海が恐くて堪らないアル。


イジメも不登校も無くすと決めて委員長になったレオは不登校のアルを訪ねます。
出会ったアルは潮見台で生き生きとして、大人と対等に仕事をしていました。
そんなアルに惹かれ、感動して友達になりたいと思うレオ。


ポジティブで明るいレオはそれ故にアルの不登校の理由に触れてしまい、落ち込みます。
それでも持ち前のバカみたいに真っ直ぐなポジティブさでアルのところに足しげく通い、仲良くなっていく、と。


このシリーズで男の子2人の友情ものは珍しく、新鮮です。
仲良くなっても踏み越えれなかった一歩を越えての笑顔は嬉しくなってしまいます。

凪と波 なぎとなみ

一人の男の子を残し、他の星へ辿り着いた移民船のお話。
今巻で一番ファンタジーでSFな話ですね。


移民船暮らしで星の自然の美しさに感動し、辿り着いた星の生態系の壊すまいとする優しい少年・ナギ。
ナギを慈しみ、愛を注ぎ、大切に育てようとするナミ。
持ち込んだモノで多少生態系が変わってしまっても、希望を託され、愛を注がれたナギは優しく成長していきます。


後半に訪れる衝撃と希望の結末が何ともSF。
水惑星年代記」では時系列はバラバラで連載されているので、いつかこの話の続きが読めるかもしれません。それが楽しみ。

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碧 水惑星年代記 (ヤングキングコミックス)

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