この水の惑星で大人も子供も前に進んでいく物語 - 碧水惑星年代記
前回の更新に引き続き、大石まさる先生の「碧水惑星年代記」の感想・後半を。
ホシテルムシ
性格きつめの大学院生・華と、新種の虫捜しで休学中の中学生・賢司のお話。
珍しいグライダーに華が興味を持ち、持ち主の賢司と出会います。
新種の虫・ホシテルムシを捜すために一人でキャンプし、グライダーで空を飛ぶ賢司に強引に着いて来た華ですが、強引なお節介ながらも姉御肌な面倒見の良さが見え隠れしていていいなぁ。
新種で、まだ虫と認められていないホシテルムシ。
昔にそのホシテルムシを見つけ、もう一度見つけようとする賢司に半ば呆れつつも世話を焼く華。その歳の差は15歳というのは良いですね。
無茶に見えることでも、若い頃に明確な目的を持っての行動は、若くて青臭くても大人の目からは輝いて見えたりするものです。
自分たちがその歳の頃にはそんな目的や行動力は無かったかもしれないから。
達成されずともその経験は尊いと思うのですが、目的に達したらそれは物凄い感動を生むはず。
賢司と一緒に日々を過ごしホシテルムシを捜した華は、見つけた感動とともに大人でありながらも少年期特有の経験もしたんじゃないかと思うのです。
更新行進曲
露天商の少女がトントン拍子におつかいをしていくお話。
男性客へのお釣りを崩しにパン屋へ行き、思わず買ってしまったパン代の為にパンの配達……。
メルヘンちっくでテンポのいい話ですね。
男性客が少女をパン屋へ向かわせ、少女がパン屋のおつかいで行った先で影響を与えて…と人と人が繋がっている展開が良いです。
初めの男性客は別に目的があって、少女のおつかいのバックグラウンドでそっちも進行していて、最後に収束するのも良いなぁ。
一歩ずつ前へ進んで自分を更新して、自分だけでなく他の人や動物、地球そのものや自然も進んでいるんだよ、っていう可愛らしいお話。
ちょっと強引な展開もあるけどそこはご愛嬌。和みました。
正しい地図
仕事を辞めて20数年ぶりに産まれた町に戻ってきた中年男性のお話。
大人の目から見た、少年期を過ごした久しぶりの町は変わってない場所も変わった場所も新鮮なものです。
子供の感性での記憶や思い出補正なんかがあって、実際の距離や大きさと違って感じていた発見。
成長したから感じる懐かしさと、子供のように懐かしい場所を駆け回るのは大人の楽しみと言えましょう。
地元を離れていたなら地元、離れていなくとも母校やたまに行った親の田舎など、そういった場所で感じられる懐かしさ。
大人になってもそういう子供心は大切だったりするんですよね。いや、大人になったからこそなのかも。