図書狩りから本を守る、愛と戦いの物語 - 図書館戦争 LOVE&WAR(1)



図書館戦争 LOVE&WAR(1)/弓きいろ 原作:有川浩(Amazon)


メディア良化法により検閲が行われる時代。
メディア良化委員会の図書狩りから本を守る為、図書館は図書隊を設立。
大好きだった童話の続きを求めて訪れた書店で検閲から本だけでなく、その本を愛する自分をも救ってくれた図書隊員に憧れて図書隊に入隊した笠原郁を主人公とした物語です。


原作小説は未読なので、「図書館戦争」はこの弓きいろ版で初めて触れました。
面白いです。
現在アニメが放映され、電撃大王でもコミカライズされている作品だけある面白さだと感じました。


弓きいろ版「図書館戦争」のサブタイトルは”LOVE&WAR”。

LOVE

笠原は図書隊員に助けられた経験から、前線で戦う「防衛員」に志願しています。
高身長と男顔負けの身体能力を有するものの、座学はサボりがち。
教官の堂上と衝突が絶えません。


堂上は笠原に一目置いていて厳しさの中に優しさもあるのですが、そうとは知らない笠原にはあまり伝わっていません。
いや、それを感じても笠原はすぐにいつものようにすぐ反発してしまう。
認めていても、意地を張ってしまう自分が表に出ている、そんな2人です。
ヤキモキしてジリジリしますね。


だからこそ、素直な感情が前面に出ている場面が非常に良いです。
優しさ、自分の弱さ、真っ直ぐな感情が心に沁みる。
打たれ、沈んで、それでも前に進もうとする笠原と、厳しくも見守り支える堂上はいいコンビですね。
お互いに意地を張りつつ、たまに照れた表情を見せる2人が可愛いですよ。特に堂上教官が可愛い。

WAR

図書館戦争」のメディア良化法による検閲は色々と考えさせられるものがあります。


メディア良化委員会は害意を含まない些細な表現ですら規制し、本を狩ろうとします。
言葉も、イラストも、写真も、”不適切”なものがわずかにでもあれば規制の対象となってしまう。作者の考え方・人間性でさえ規制の対象となってしまう。
その、ある意味で狂信的にも見える検閲から、図書隊は本を守る為に戦うわけです。


メディア良化委員会は横暴で過剰に感じられ、そういう意味合いを持たせて描かれているようにも思えます。
本質を見ず、「影響のありそうなものは規制して、見えないようにしてしまえば問題は起きない」という考えは危険だと思います。
これは何も本作の中だけの話じゃないですよね。
現実にもそういう動きはあって、この単行本の発売時期はあまりにタイムリーだと思いました。



風刺的なものを感じるテーマながら、恋愛に重きを置かれていますし、少女漫画の柔らかさがあって読みやすいですよ。
オススメしたい良作です。