好きあっていても、切なく揺れる恋心 - ささめきこと(2)



ささめきこと(2)/いけだたかし(Amazon)


親友に片想いする主人公の、切ない気持ちが胸を締め付ける「ささめきこと」。
2巻も爽やかで淡い青春もの、学園百合漫画となっています。

好きだから、言えない

主人公の純夏は親友の風間が好き。
風間は女の子に恋をするけれど、純夏は風間のタイプから外れている上に「ずっと友達でいてね」と言われたことがあります。
だから、純夏は風間に告白ができない。


ダメだとわかっているから、告白して気まずくなりたくない。
傷つけたくないし、傷付きたくない。
好きだから、好きだと言えない。



好きなのに告白できないこの状態が切なく、胸がジリジリするんですよ。
しかも純夏が風間のことを思って、風間の恋の応援をしたりするからまた切ない。なんていじらしいんだ!


想い人に「好き」と伝えられないのは相当に胸を苦しくさせるもの。
誰か相談できる人がいれば相談・協力とともに、悶々としすぎた心のガス抜きにもなります。
1巻で純夏は女の子カップルの朋絵とみやこに出会い、自分の気持ちを知られました。
ちょっとした気遣いやアドバイスなど、彼女らのさりげない協力と見守るように優しい視線が良いです。
この物語の主役は純夏と風間であり、朋絵とみやこはでしゃばり過ぎていない感じがしますね。

自分以外の誰かが、会えない時間が、心を揺り動かす

純夏が風間に告白するには、風間を純夏の方に向けさせればいい。
気にしてくれるように、恋愛対象に見られるように。


そしてそれは物語的には、第三者の登場・三角関係というエッセンスが効果的です。
とういうわけで、新キャラ・同級生で百合好きで同人作家のあずさの登場ですよ。


不慮の事故で純夏があずさを押し倒してしまった体勢になって、それを見た風間の表情・反応と言ったらもう胸がチクッとするものでした。
でもあれ、何で風間はそんな反応するの?



その趣味から友達のいなかったあずさは暴走気味に純夏を同人誌作成に引き入れます。


夏休みということもあり、会う時間も減って予定もすれ違う純夏と風間。
会えない時間に、純夏があずさと2人でいるのが気になって仕方ない風間のその表情は物憂げです。
親友が自分以外の友人といることで、風間の気持ちはざわつき始めました。
この自覚していない嫉妬と思われる感情が、恋と友情の間で揺れていて良いですね。



一方で風間に早く会いたいながらも、あずさの手伝いに本気で取り組む純夏。
その純夏の気持ちと優しさに惹かれ始めるあずさも良いんですよ。
純夏と風間が2人でいる時の輝いた笑顔を目の当たりにした、その表情も恋であり、切ないんです。

好きと言えない、好きと気付いていない

作中のセリフにもありますが、「ささめきこと」は好きあっていても、好きだと伝えられない女の子と、好きだと気付いていない女の子という微妙な関係が魅力です。
淡く揺れる切なさがあり、惹かれあっている安心感もどこかあります。


その上で、風間のモノローグや心の声がほとんど描かれないのが良いんですよ。
確かに惹かれあっているもののそれに気付いていなくて、風間の純夏への好意がどの段階のどういったものかは明示されていないわけです。
表情や言葉、行動から読み取る形になるので、純夏への感情移入がなされて応援したくなってくるのですよ。

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ささめきこと 1 (1) (MFコミックス アライブシリーズ)
いけだ たかし
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おすすめ度の平均: 4.0
5 かわいたのしい
5 読んでいて気持ちの良いラブコメ
5 目指せ2巻! いや、マジで。



そういえば”一番の美少女”ポジションで女装少年がいて、彼がメインの話が2巻の1話目に収録されているんですが、個人的にはちょっと…な話でした。
百合で三角関係とするには、女3人か、女2人に男1人。
風間がかわいい女の子が好きなので、朱宮少年は女の子よりかわいくてかつ純夏が好き、という設定なんでしょうね。
でもその妹の暴走っぷりが強引すぎると思いました。
「かわいい女の子が好きなのに、どうしてかわいいうちのお兄ちゃんを好きにならないの!」はなぁ…。
「嫌よ嫌よも好きのうち」なら、周りが強引にくっつけようとする展開もアリだと思うんですが、純夏は本気で嫌がっているので、これはないなー、と。


以上、いち百合好き・ラブコメ好きの意見でした。