繊細で透明な珠玉の連作集 - 群青学舎(3)
入江亜季先生の珠玉の連作シリーズ「群青学舎」3巻ですよ。
個人的に、ビームで一番楽しみな漫画だったりします。
「群青学舎」は登場人物の立場も、時代設定も舞台設定も異なる連作。
ですが、共通していると感じるのは登場人物の真っ直ぐさ。
妙に捻くれたところの無い、あったとしてもそれは解きほぐされて、新しい一歩を歩むことができる。
だから、「群青学舎」には透明感と繊細さを感じます。
3巻は前後編の「薄明」、3編からなる「待宵姫は籠の中」を含む8編を収録。
赤い屋根
素直になれない父娘のお話。
自慢の娘でかわいいと思いつつも、それを当の娘には見せない父。
父がそう思っていると信じられないものの、父の話を聞きたがる娘。
お互いに大切で好かれたいと思っているのに、妙なところで頑なで素直になれない様が良いです。
娘の世話役が仲介役になってなんとか回りつつ、父親を焚きつけて動かしていくという。
大切な日に父に会った時の娘の笑顔が輝いてかわいいんですが、この話で一番かわいいのは父親だと思うんだ。
続々ピンクチョコレート
「ピンクチョコレート」の続編ですよ!
「群青学舎」で一番好きなシリーズだけに続編は嬉しい限り。
美人で頭が良いけれど、部屋の整理もせず服装にもだらしない三也子と付き合っている春日。
私生活がだらしない三也子と、キッチリしてそうな春日は良い凸凹カップルだと思います。
しかし、レンタルしたものを放置して、悪びれない三也子に春日もさすがにキレます。
金銭が絡むケンカだけど、金の問題じゃないんだよ。
好きだからしっかりして欲しいし、口うるさく言ってしまうのも好きだから。
でも、それを「お金を多く渡したからいいじゃん」とアバウトな対応されたらそれは怒りますわな。
三也子の愚痴や「別れる」と言いつつも他の男が近寄ろうとすると殴るあたりに、春日が根本的なところで三也子に完全に惚れている感じがします。
ケンカしたからといって、酔ってあれだけ乱れてしまうのも、それくらいに好きってことなんですよね。
薄明
活発な女の子と病弱な男の子、2人の視点で綴る前後編のお話。
自分の命が長くないと知ってどんな知識も興味深く吸収する男の子と、あまり物事には執着しない女の子という対象的な2人で、結構構成も面白いと思いました。
前編は女の子視点で、男の子がいなくなった後のことが冒頭に描かれます。
そして彼との日々を思い出すけれど、彼はいない。
でも彼の読んでいた本は変わらずあって、本に挟まっていた葉っぱを見て彼を思います。
男の子が近いうちに死んでしまうという予感とともに、前編は終わります。
後編は男の子の視点。
死に引きずられるイメージが全体を覆う中、活発に動く女の子が生き生きとして感じられます。
時系列として後編は前編の直前の話にあたります。
最期を迎えた男の子の安らかで優しい気持ちがラストにあるので、女の子が哀しみの渦中にいるものの、読後感は少しだけ救われた感じを受けます。
雪降り積もる
10年来の友人と鍋をする4人の女性のお話。
毎年、10年ずっとその部屋で4人過ごすのが恒例となっているようで、古びたその部屋がノスタルジックです。
学生の時から変わらない光景、変わらない関係。
反面、老朽化したアパートは取り壊しを迎え、変わっていくものとして対比的に描かれます。
学生時代のコミュニティ、変わらずあったアパートというモラトリアムから外に出ても、4人の関係はこれからも続いていくだろうもので、変わらず続いていく友情は煌いています。
自分も友人とそうありたいと思わされる、じんわり温まる話ですよ。
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はまりました。
宝石箱のような短編集
おまけ
掻き立てられました。
なつかしいような丁寧さ
とにかくいい!!