恋愛下手には切なさが胸にグサグサ突き刺さる - ヘタコイ(2)
ケイケイ先生の「ワンダフルライフ?」の第1話にこんなセリフがあります。
ドラマとはいえ自分より幸せな女がさらなる幸せを手に入れる話なんてなにがおもしろいの?
共感どころか応援する気にもならないわよ
これは一理あると思います。
作品な面白さは別として、共感はできない。
いいなぁ、と思うことはあります。羨んでしまう、そういった面白さはあるんですけどね。
登場人物が魅力的なら応援もしたくなります。
作品にもよりますが、でもやっぱり共感はしにくいかもしれない。
そこで「ヘタコイ」ですよ。
恋愛下手だから、共感できる
「ヘタコイ」は、通称「御隠居様」のジジくさい主人公・静と、美人でモテるけれど恋愛に奥手で慎重な流香の、大学生恋愛ものです。
地味でジジくさくて恋下手な主人公だけに、モテなくて恋愛下手な男としては共感してならないのですよ!
あとがきにある通り、静みたいな男が実際にいたらモテると思いますが、その言動やうまくいかなさは胸を激しく締め付けます。
片想いなんてうまくいかない方が多いんだよ、絶対!…いや、多分。
ふらりと訪れた露天風呂で大股ひろげて酔い潰れている女性を発見、その後、大学で入った「旅と温泉愛好会(タビセン)」で彼女に再会。
流香はそのことを知らないけれど、そんな出会いだから、彼女が気になっても普通に接することができない。
そして彼女に隠していた出会いのことを知られて拒絶されるんですが、これが何度読んでもジリジリして仕方がない。
さらには「無視し合えば大丈夫だから、タビセンを辞めないでほしい」という追い討ち。
会えないのに、コミュニティから去ることもできないこの切なさ。
1巻の5話は神懸っています。
何度読んでも、本当に胸の奥にあるものが喉から出そうになる。
流香も静が気にはなるだけに切なさは上乗せされているんですよ。
踏み出したその先は、さらに切ない
そんなどん底付近まで叩き落された状態で夏休みに突入という状況で、静が動いたところまでが1巻。
うまくいかないかもしれない、でもこのままでいても何も変わらない。
ならば動くしかないじゃないですか!
勇気を振り絞った一歩は大きいんですが、その先に安心できるものがあるとは限りません。
でも踏み出すしかない。
メールのやり取りができる関係に戻っても、でも会えるまでではないからこその不安。
気にして何も連絡できなくなるのが怖い、でも気にして欲しい、好かれたい、嫌われたくない。
そんな不安がない交ぜになってメールひとつに一喜一憂するのは、切なくなるくらい共感してしまいました。
静は流香を好きな気持ちに真摯なのが良いんですよ。
だからこそ、周りも協力してくれるというもので、読んでいて応援したくなります。
告白して、待つことは許されて、待つことだけ許されて。
彼女の事情も気持ちも自分ではどうにもできない、大きく動けない、そんな苦しさやもどかしさ。
でも真摯な気持ちは伝わっていて彼女の心を揺らす、と。
甘くて、時折心配事があるラブコメはヤキモキしつつも幸せな気持ちにさせてくれます。
でも、うまくいかなくて、伝わっている気持ちもあって揺さぶられる恋物語の方が、胸に強く残ります。
締め付けられる切なさ、苦しさも強いんですけどね。
うまく幸せな結末に着地して欲しいと思いつつ、実際に自分も幸せになりたいなぁと思いつつ、続きを楽しみにしています。
これでうまくいかないラストだったりしたら、泣く。泣いてしまう。
おもしろい