男子がいるからこそ引き立つ百合 - GIRL×GIRL×BOY-乙女の祈り-



GIRL×GIRL×BOY-乙女の祈り-/KUJIRA(Amazon)


「百合と彼女とノーマル男子によるありえない三角関係!!」

のオビに一瞬、んん?と思ったものですが、これは良い漫画でした。
恋愛漫画として面白く、百合としても面白い。



主人公の風花は幼い頃に男子にイジメられてからというもの、男嫌いに。
当時、イジメから守ってくれた利理のことを好きになり、努力して彼女に相応しいキレイな女の子になりました。
そして風花と利理は付き合う関係になっていたのですが、利理からの突然「別れよう」と告げられます。
「好きな男の子ができたの」と。


利理にフラれ、普通の幼馴染に戻ろうと言われたショック。
さらには利理が好きな相手が、昔、風花をイジメていた一太だというショック。
しかも、一太は風花が好きだという。


風花→利理→一太→風花、という三角関係から導入され、この物語の恋愛に、人間関係にグイグイ引き込まれます。
ままならない。切ないよ。

女の子×女の子×男の子

「GIRL×GIRL×BOY」は百合漫画なのですが、男子である一太がいるからこそ成り立ち、引き立つ話になっています。


嫌いで別れたんじゃない、好きなんだけど、別れてしまった以上、前とは違っていてギクシャクしてしまう。
そんな時に一太の、
「べつに恋人同士じゃなくなっても友達同士ではあるんだろ?」
の言葉はどれだけ2人を救っただろうか。


これ、異性愛者の男性が言ったのが結構大きい言葉だと思うんですよ。
風花と利理が付き合っていたと知って、ちょっとビックリしつつも茶化したり引くことなく接する一太の言葉だから、響くものがあります。



んでも、三角関係は三角関係なワケで。
抜け駆けしないよう、「遊ぶ時もいつも3人一緒にいよう」ということになります。
全員が片想い状態の3人が常に一緒にいる…なんとも微妙に不安定な関係。
それぞれがそれぞれに2人きりになりたくて、もう1人が邪魔で。
遊園地に行った時なんか、1人別の席になって居心地が悪くて。


その居心地の悪さは3人とも感じていることで、自分以外が1人で寂しくなるのも心苦しく思います。
これがこの漫画の面白いところなんですよ。
恋愛の成就の為には邪魔、でも誰かが仲間外れになるのはどうにも胸がザワザワする。
こんな関係、すぐに破綻するに決まってます。



案の定、破綻してバラバラになるわけですが、その破綻は人間関係が壊れることなんですよね。
今までの、幼馴染であり、友達であり、恋敵である、そんな関係が壊れる。
だからもう、その瞬間なんて胸が痛むものです。


でも、でも、本当に痛いのは壊れたその先。
好きだけど、気持ちの向かう先が無くなってしまった。
そんな時だから出てくる本音もあって、「GIRL×GIRL×BOY」はその本音とそれによる行動の展開・描き方が秀逸。


好きなんだ。大切なんだ。
だから、守りたいんだ。



百合好きとして凄い良かったというしかないラストでありながら、一番可愛いのは一太だと思った稀有な漫画です。
彼がいたからこその関係で、だから成り立ち、引き立つ話。面白いです。

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