プリンセス・アニマと幻獣の騎士の登場でますます面白くなってまいりました - 惑星のさみだれ(5)



惑星のさみだれ(5)/水上悟志(Amazon)


個人的に、今連載されている漫画で一番好きな漫画は「惑星のさみだれ」です。
毎月本誌の連載を楽しみに追っかけているわけですが、それでもやはり単行本は待ち遠しくて、まとめて読むとまた楽しませてくれます。
漫画は、続けて読むことで気付くことも多いですものね。


好き過ぎる作品なので、ネタバレ全開で徒然と書きます。



5巻は、30話・34話・35話が獣の騎士団、31〜33話がさみだれがメインの話になっています。


惑星のさみだれ」はサブタイトルで誰がメインとなっているかが解りやすく、個人にスポットが当たっている話はより重要度が高い展開をしています。
それだけに熱く、魂を震えさせてくれるものでもあります。

超能力はイメージに依存する、デタラメでテキトーなもの

30話は海での強化合宿…もとい、息抜きの話です。


この話でのポイントはまず「超能力はデタラメでテキトーなもの」のセリフでしょう。
「できそうな気がした」という理由で水をはじき、海の上を歩くさみだれ
超能力はイメージに依存するものだということが明確に言葉になり、夕日は力に対して思案します。
イメージ、つまり発想の豊かさが、超能力=掌握領域の強さに関わってくる、と。あと、身体能力の強化にも繋がるんでしょうね。



このイメージが重要っていうのがキモで、特殊な能力でない限りイメージ次第で他人の技も使えるというのを実証しました。
夕日が”あの人”の必殺技を具現化した、あの場面の熱さといったらないですね!
しかもそれが、三日月の前でやってみせたという。


惑星のさみだれ」の熱さのひとつとして、「死に逝く者が、遺された者に意志を引き継ぐ」展開があります。
半月が夕日と三日月、氷雨に、師匠が昴と雪待に、そして連載の方でもそういう展開をすると思います。
形のない”志”だけでなく、目に見える形で半月の技を受け継いでいた夕日が、さらには掌握領域までも使えるようになるという。あの人の存在は消えない。
ノイの言葉にもあるように、子供は大人のマネをして大人になっていく、という”大人から子供、次の世代に繋がる”こともひとつの重要なテーマな気がします。
そう考えると、年長者である南雲と風巻さんが早い段階で死んでしまいそうな気もします。その場合、風巻さん→茜の影響は確定的で、南雲の方は白道さんに影響を与える形になるのかな?



30話には他に、白道さんが夕日とさみだれの本当の目的を知ってしまったことあります。
獣の騎士団内の不穏な動きは茜がアニムス側についたことがありますが、またここでひとつ不安因子が出てきました。
しかも今回のは、白道さんとシアしか知らない(夕日とさみだれは聞かれたことに気付いていない)という状態。
これがどう伏線として絡むか楽しみなところです。
それはそうと、白道さんかわいいよ白道さん。


あとは、それまでに活躍した主人公の夕日にさみだれ、ライバルの三日月を戦闘から外し、新しめのキャラによる共同戦線という演出が熱いですね。

成長が力に繋がり、心の距離に繋がる

で、超能力はイメージだけでなくて、精神力にも左右されると思われます。
心が成長すると力も増す、と。
これは成長を目に見える形で表現しているようにも思えます。
夕日が川を飛び越えたシーンがそんな感じじゃないかな。


さみだれは飛び越えれた川。夕日と距離を置くための川。
この”川”はさみだれと夕日の心の距離のメタファーだと思うんです。と同時に、力の差でもある。
この川と飛び越えれた夕日は、力を付けたことと同時に、いやそれ以上に”さみだれの隣にいられる人”になった、と。
これ以降、異性として、さみだれが夕日をチラチラ気にする描写も目を引きますね。



なにも、精神の成長が力に繋がるのは夕日だけではありません。
他の獣の騎士もそうですし、姫であるさみだれも例外ではない。
円満とはいえない家族仲の問題があります。
それを31〜33話で描き、家族で乗り越えることになります。


一歩踏み出し、本音でぶつかり合う。
それが一度こじれた人間関係には必要なこと。でも、それはそう簡単にはいかず、キッカケが必要なんですよね。
その役割を果たすひとりが夕日で、さみだれと母親にとっては姉の氷雨
夕日が氷雨の背を押す場面の心に染み入る感じと、氷雨・夕日のそれぞれがさみだれの支えになる場面は名シーンです。泣ける。



氷雨の不安を軽くしたのは夕日だけではありません。
夢の中でさみだれと夕日が会っていたのと同じように、氷雨も人と会っていました。
その会っていた人がアニマだというのが、もうね!
夢でさみだれと夕日がいた場所には扉があって、その扉の向こう側に氷雨とアニマがいたのも良すぎる演出です。
無意識の心の扉の向こうに、欲していた家族がいて、本当の精霊の力があるという。扉がそのまま、心の扉として描かれていたわけですね。
姉・母とのわだかまりがとけて、精霊が顕現するのは秀逸な流れだと思いました。*1

プリンセス・アニマと幻獣の騎士

というわけでアニマが登場したわけですが、天然…というか不思議ちゃんというか、マイペースというか…色々意に介さなさそうです。
それでいて何をされても許してしまいそうな不思議な雰囲気。
妙な魅力があります。振り回されたい。


実際に振り回すタイプのようで、従者が軒並みゲンナリしているのが面白いところですが、アニマの登場で幻獣の騎士も現れます。
その幻獣の騎士がまた凄いんだ。
このやり方は斜め上過ぎます。この重要なシーンでこんなギャグっぽい演出。これが水上先生の魅力のひとつだよ!


そんな感じで、霊馬の騎士の登場と相成りました。
他の幻獣の騎士・黒竜と神鳥ですが、夕日の予想通りの分類ならば、順当にいけば夕日と三日月がランクアップでしょう。
それ以外でも面白いですが、そこはさすがに外さないと思います。


ただ、強大すぎる幻獣の騎士の力は、それに振り回されることなく扱えるだけの精神の強さができてからランクアップという流れになる気も、南雲のセリフから思いました。
ランクアップが夕日と三日月で、力に酔った三日月が夕日と対決、という展開でも面白いな、とは思いますが。



何にせよ、今後も楽しみすぎるほど楽しみに追っかけていきたい作品ですよ。

*1:夢の中の扉自体は開いてはいないので、まだ何かありそうですね。