あたたかい宝物のような短編集 - Tesoro オノ・ナツメ初期短編集



Tesoro オノ・ナツメ初期短編集/オノ・ナツメ(Amazon)


オノ・ナツメ先生の初期短編集「Tesoro(テゾーロ)」。
IKKIでの読切と同人誌の作品を収録した短編集です。
”初期”短編集を謳っていますが、今発売されているIKKIに載ってる読切が収録されててビックリした!弁当のやつです。


”Tesoro”はイタリア語で”宝物”という意味とのこと。
オノ・ナツメ先生はコミティアで同人誌を出してらしたんですが、「Tesoro」ではその同人作品が9本収録されています。15本のうち、9本も!
過去に同人誌で発表された作品はなかなか読めないので、こういう形で単行本になるのは嬉しいですね。
そういう意味でも”宝物”といえます。



オノ・ナツメ先生の作品は「GENTE」や「さらい屋五葉」のような頭身の高い作品と、「Danza」などの頭身の低い作品があって、「Tesoro」は頭身の低い方。
キャラの頭身が低いこともあって、雰囲気に絵本のような柔らかさや優しさ、あたたかさがあります。
オノ・ナツメ先生のこっちの絵柄は一般的な漫画の絵柄ではないと思いますし、崩れている印象もあるんですが、童心をくすぐられるような心地良さがあるんだよなぁ。
キッズ向けのキャラクターの造型のようなものを感じるからかな。表紙とカラーページを飾るクマなんか、まさにそんな感じですね。


それでいて短編の話そのものは大人が読んでこそ、ほんのり心があたたかくなるという。
何気ない日常の1ページを切り取ったお話に幸せを感じずにはいられません。
登場人物の中には身内の死が近かったり、刑務所から出所間近だったり、片親がいなかったりと重い事情を抱えていたりするのですが、主に当てられるスポットはそこではなくて、そんな彼らの日常の1ページなのが良いです。
その日常は特別な日だったりもするんだけども。



IKKIの読切から3本収録してまして、中ではひょろっと痩せた老夫婦の「もやし夫婦」が好きです。
近所に仲が悪いと噂されているのを知って、一緒に外を歩いて、一緒に甘いものを食べようと言い出す旦那さんが可愛らしい。
一言、憎まれ口のような発言をするんですよ。可愛らしい夫婦でいいなぁ。



収録されている作品は、同人誌の作品も読切の作品も”親子”をテーマにした作品が多いですね。
それは夫婦だったり、親子だったり。
そういった絆のあたたかさを感じられる短編集です。