神罰を下す少女の贖罪と狂気の物語 - TISTA(1)



TISTA(1)/遠藤達哉(Amazon)


ジャンプSQ.の創刊号を読んで私の中で一番印象に残ったのは「TISTA」でした。
エンバーミング月ジャンからの作品は面白かったのですが、SQ.から連載開始された面白い漫画が「TISTA」だったのです。
それだけ私の目を引いて止まず、現在までの連載分も継続して面白く読んでいます。



”悪人”を長距離から狙撃して始末するニューヨークの死神”シスターミリティア”。
10年で数え切れない程の人数を殺し、警察の捜査もむなしく正体不明は謎に包まれた殺し屋。
その正体こそがこの漫画の主人公であるティスタ・ロウンなのです。


ティスタは大学では地味で目立たない少女ですが、眼鏡のその奥の瞳、瞳の奥の心には深い闇を持っています。
彼女は幼い頃に親を亡くしており、孤児として教会で育ちました。
そして、”聖務”をこなす修道騎士(ミリティア)としても育てられ、今のティスタがあります。
神罰を下す時、ティスタの両目は銃器のサイトのような模様に変わり、その時の様々な演出はベタともいえますが震えがきます。
その照準器のような目は、十字架とかけてある部分もあるんじゃないかな。



そんな彼女がひょんなことから、画家を目指すお調子者っぽい青年・アーティーに出会い、運命が動いていくというストーリー。
トラウマ持ちで精神的に危うい存在であるティスタが、それまで迷いなく行ってきた”仕事”に支障をきたし始め、精神的に不安定になっていきます。


アーティーもティスタとのボーイミーツガールな出会いにより生活が変わるのですが、ティスタのことが気になるも、簡単にティスタのいる世界・人を殺すティスタの方に踏み出せないのが良いですね。
アーティーが勇気を振り絞って彼女に近づいていく様、それによってティスタがどうなっていくかがこの漫画のキモになってくると思います。



第1話の完成度がやたらと高くて、引き込まれるとともに必要な基本設定をキチンと詰め込んだ内容になっていると思います。
父親との過去は1話時点でのものでも納得できるものではあったのですが、それも2話で描かれた過去によって良い意味で裏切られました。
話が進むごとに少しずつ少しずつティスタの過去が語られ、それに呼応するようにティスタの不安定さも進行していく、そんな演出に魅入ってしまいます。



遠藤達哉先生は「TISTA」が初の連載、初単行本なんですよね。
読切はREVOLUTIONに掲載された原作付きの「屋上探偵 -オクタン-」くらいしか私の記憶に残ってはいないのですが、確かに面白かったです。
連載の展開も、遠藤先生の活躍も今後とも楽しみです。