津田雅美先生のBL作品を含む、珠玉の短編集 - ノスタルジア
津田雅美先生の新刊は久方ぶりの短編集。
”傑作読切作品集”のオビのキャッチコピー通り、珠玉の読切を4本収録しています。
ノスタルジア
表題作「ノスタルジア」はカレカノの劇中劇「鋼の雪」のアナザーストーリー。
「鋼の雪」…な、懐かしい…!まほさんがカッコ良かった劇だ!
とまぁ、少し懐かしくなってしまったのですが、カレカノの登場人物が出るわけではなく劇で使用された話のアナザーストーリーなので突然「ノスタルジア」から読んでも全く問題ありません。
兵器として造られたアンドロイドを、人間の里親と一緒に生活させることで人工知能の健全な発達を促す”里親制度”。
それにより、里親となった刑事・摂とアンドロイド・シリウスのお話です。
兵器として多くの人間を殺してきたシリウスが、人の役に立つ仕事をし、摂に笑顔を向けられる。その幸せ。
しかし、人間を殺した過去は消えるわけではなく、殺した人間の身内もいるわけで。その身内に怨まれるのも必然で。
人間を殺す為に造られた。アンドロイドは命令には逆らえない。だから、殺した。
殺したのはアンドロイドだけれど、殺意を持っていたのは人間というのがひとつの対比的なものになっている重めな短編です。
摂の言葉がシリウスの救いとなるラストがじんわりきました。
恋愛は、普通。
生まれてからずっと「かわいい」と言われ、高校でも男子生徒のみならず男性教諭にも惚れられている美少年もお話。
うん、美少年なんだ。
津田雅美先生のこういったノリの漫画は新鮮で、収録されている他の3本が重めな作品だけに気持ちが浮き上がるくらいに楽しいです。
男子の心を鷲掴みし、ひとり占めする形なので女子一同から嫌われていて、それがまた男子を「俺が守って/慰めてやる!」という心情に駆り立てているという。
そう、共学なんだ。男子校ではなく、共学でこの状況なのがまた明るいポップな雰囲気になってます。
そんな彼が、背が高く、呪われる(というか、他の生徒にとってトラウマな)引きこもっていた少女と急接近する展開が楽しくて、かわいいですよ。
これも一種のギャップが良いんだろうなぁ。
な忘れそ
この短編集で一番驚いたのがこの「な忘れそ」。
津田雅美先生がBLを描かれるとは思いもしませんでした。
いや、BLというよりも少年愛と言った方がしっくりくる、そんな作品。魅せられます。
小学生の頃、勉強も運動もできた者同士で負けたくない相手だった、親友の友也と春亜。
でも、春亜はずっと難しい本も読んでいて、その姿はとても美しく触れがたいものに見えたんだ。
しかし春亜はホルモンの病気で完全な成人男子になれず、成長するにつれて身長の差も拡がっていき、関係はギクシャクしてしまいます。
春亜は他人と打ち解けようとはせず、こんなに想っているのに友也には春亜の本心が見えません。以前とは変わってしまった。
同姓だから本心を見せられず、それでもぶつかり合うのが男と男の関係を描いた作品の魅力のひとつだと思います。
男女ものだと、相手の性を考え、自分の性を活かした行動になるので。(それが男女ものの魅力でもあります。)
百合の場合はまた別で”ぶつかり合う”よりも”近づきたい”といった印象のものが多く感じます。
津田先生のBLは初めて読みました*1が、とても面白かったですよ。
普段BLを読まない人でも、少女漫画を読みなれているならば楽しめるだろう雰囲気を纏っていると思いました。
ブログ内関連記事
○津田雅美、2年ぶりの新刊! - eensy−weensyモンスター(1)
*1:「な忘れそ」以外に描かれているのか判りませんが。