人間関係が複雑に絡み合う予測不能の音楽漫画 - 爆麗音−バクレオン−


 

爆麗音−バクレオン−(1)/山田秋太郎 原作:佐木飛朗斗(Amazon)
爆麗音−バクレオン−(2)(Amazon)


映像作品と違って小説や漫画には絶対に無いものがあります。それは”音”。
紙媒体である以上、誌面から音を鳴らすことは当然できません。*1
ただ、”音楽の迫力”を誌面から感じられる漫画はあります。
「のだめ」然り、「ピアノの森」然り、「BECK」然り。また、「昴」の圧倒的な表現力には”音楽”すら感じられるかのようです。
演奏者と音の演出、熱狂する聴衆の描写に聴こえていないはずの”音”を感じ身震いすることは多々あります。
この「爆麗音」にもその”音楽の熱気”を感じられました。



後のビッグバンドとなる「爆麗音」の印南烈と主人公・音無歩夢の運命的な出会い、周囲の人間を巻き込んで綴られるバンド漫画です。
この作品の前奏曲として「パッサカリア[Op.7]」という作品があるのですが、読んでいない私でも問題なく読み進められました。*2
クラシックの名曲のみならず、ローリングストーンズなどの紹介が要所要所で入るので音楽知識がなくても楽しめるのも良いですね。


オビを見るまで気付かなかったんですが、原作の佐木飛朗斗先生は「特攻の拓」やヤンジャンで今やっている「外天の夏」の原作の方だったんですね。
だから族や独特のセリフ回しが多用されてるんだ。納得。

複雑に絡みあいすぎている人間関係と「音楽って最高!」

1・2巻同時発売だったわけですが、1巻の段階でやたらめったら登場人物が多く、2巻で更に増え、複雑に絡み合っています。それはもう複雑に。
この人とその人が繋がっていて、あの人とも因縁があって、さらに新しく出てきた人とも関係がある、という感じに入り組んでいます。
2巻の巻末に簡単な相関図があるのですが、それでもさっぱり足りません。


主人公の歩夢は就職した会社が倒産して現在フリーター、小さなバンドのお荷物なギタリスト22歳。
偶然の、しかし運命的なセッションを歩夢とした烈は元・有名音楽家の父と超絶な技巧を持ち、過去に親友と指をうしなう事故に会った19歳。
そこに、烈の友人で兄を亡くした理香子、烈の父親を追いやった巨匠のジークフリートガンディーニ、父を嫌うガンディーニの娘のヴィオレッタらがキーパーソンとして登場します。



歩夢が偶然入ってしまったクラブだかパブだかの店で、ピアノを弾いていた烈。
超難曲を次々と弾いていく烈の演奏についていけなくなったコントラバス奏者の代わりに、歩夢が烈をジャズセッションをします。
難曲を弾いてみせる烈だけだと中二病的な超設定に見えたように思うのですが、歩夢がそれについていくことで才能を持った2人が出会い、高めあうという演出になっていると思います。
その場で権威と妄執の塊の巨匠・ガンディーニが聴いているという。


ガンディーニは世界的な権威で、烈の父親を追いやったことで烈に敵視され、実の娘との確執もあり、さらには理香子の父親とも深い因縁があってガンディーニの狂気は彼女をも巻き込んでいきます。
また、ガンディーニの弟子は烈と因縁があって(以下略



一応、歩夢本人はまだガンディーニの妄執の外側にいて、彼が勢いのままに奏でる音楽は自分も人も楽しませ虜にさせます。
1巻から2巻に跨いで描かれる、エレキギターコントラバスとヴァイオリンによるブルースとクラシック、クラシックとラップの融合した公園でのジャムセッションは「音楽って凄いんだぜ!楽しいんだぜ!」と感じさせるパワーを持っています。
この場面は名場面と言って良いでしょう。
歩夢と烈の持っている力が、ガンディーニが渇望してやまなかった力なのが今後のポイントになってくるはずで、どうなるか楽しみです。



1話で「爆麗音」というバンドができて大きなバンドになること、烈がそのメンバーであることはモノローグにあって、メンバーが集まりバンドを結成して大きくなっていく過程が描かれていくんでしょうね。
1話の見開きの扉が「爆麗音」のメンバーだと思われその扉絵の通りだと、歩夢(ギター)、烈(ギター)、ヴィオレッタ(ベース)で、ドラムのリーゼントの人は未登場。
まだまだまだ登場人物増えそうだなぁ。
現段階でも複雑に絡みまくって伏線も多く、先の予想ができません。
それは確かに読むのに煩雑な印象ではありますが、2巻までの密度と人間関係にワクワクするのも事実です。


爆麗音-バクレオン 1 (1) (ヤングジャンプコミックス)
佐木 飛朗斗 山田 秋太郎
集英社
おすすめ度の平均: 5.0
5 つづき!

爆麗音-バクレオン 2 (2) (ヤングジャンプコミックス)
佐木 飛朗斗 山田 秋太郎
集英社
おすすめ度の平均: 5.0
5 ますます激しさを増すオンガク

*1:子供向けの絵本に機械が内臓された本がありますが、それはまた別。

*2:やたら多い登場人物の一部は「パッサカリア[Op.7]」に登場しているみたいなので、読んでいた方が少しスムーズに把握できるかもしれませんね。