原作の重厚さと藤崎竜節を、どちらも確かに感じさせる漫画版「屍鬼」はすごすぎる


 

屍鬼(1)/藤崎竜 原作:小野不由美(Amazon)
屍鬼(2)(Amazon)


個人的にSQ.で一番好きな作品なフジリューの「屍鬼」が1巻&2巻と同時発売されました。
待ってました!


原作は小野不由美主上の和製ホラー小説「屍鬼」。
私は情けないことに長らく積んであってまだ途中までしか読んではいないのですが、藤崎竜版の「屍鬼」も原作の重厚さを確かに漂わせていると感じます。
そうなんですよ、連載開始された時の感想でも書いたのですが、フジリュー節でありながら確かに「屍鬼」なんですよ。



屍鬼」は、三方を山に囲まれた山村・外場村で巻き起こる怪事件を描いた作品です。
原因不明の変死体が発見され、夏風邪や貧血のような症状から数日後に死に至る者が続出。
それは伝染病と思われるものの、原因は全くの不明。
原因がわからないまま、また死人が…
そして、土葬が風習としてあるこの土地に伝わる、死人が墓から起き上がる”起き上がり”の話と、死んだはずの少女の気配…


原作の「屍鬼」はハードカバー上下巻で刊行された小説だけに、この漫画版の屍鬼も連載で追っかけるだけでは正直わかりにくい部分がありました。
登場人物はナンバーをふられるほど多いですし、やはりサスペンスホラーや推理ものはある程度一気にまとめて読んでのめり込みたいものです。
毎月の掲載もページは多いのですが、それでもやはり前号の内容、それ以前の内容ははっきり覚えていなかったりしますし。


そう思っていたら、あとがきで当初から1・2巻同時発売という話だったのですね。
単行本で2巻分を一気にまとめて読めるとはなんとありがたいことか!
でも、それを決めた副編集長のシマ氏は鬼だ!屍鬼だ!(褒め言葉

藤崎竜の漫画でありながら、確かに「屍鬼

フジリューの漫画は脱力してしまうギャグというイメージを私は持っていて、「封神演義」での良い意味で原作無視を突破して原作崩壊にすら見える演出から、「屍鬼」のコミカライズはちょっと不安でした。
「封神」は仙人の超能力バトルだったのでエンターテイメントとして面白いアレンジになっていたのですが、「屍鬼」は、ね。ホラーだもの…。


そう思っていたら、すごい雰囲気が漂っていて良いじゃないですか、フジリューの「屍鬼」は!
メインとなる登場人物は確かにフジリューのそれで、一部のキャラなんかはデザインもフジリューなんですが、非常にしっくりと雰囲気にマッチしています。
それは、老人の一部が写実よりに描かれていることがひとつで、フジリューのキャラとリアルめなキャラの中間ともいえる描写をされたキャラがいることで上手く同居している感じがします。
尾崎医院の看護婦の橋口と永田らへんが中間な感じでしょうか。


そして背景。
自然も、建物も、家具も、ほとんどの背景が白と黒のみで描写されているのがまた重厚な雰囲気を漂わせています。
写真を漫画に落とし込んだかのような背景で、それでいて漫画的なキャラが浮いていないんですよね。
これがすごい。
衣服や小物、陰影なんかで、漫画的な人物と写実的な背景の違和感を感じにくくさせているような気がしますが、なんかもう本当にすごい。
不思議と違和感をほとんど感じない。



原作が面白いのはもちろんなんですが、フジリューの表現技法もすごいと思わざるを得ないのでした。
いやもう、今後も楽しみで仕方ないですよ!

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あんまり関係ないんですが、フジリューで「屍鬼」と聞いた時に一瞬、京極夏彦の「脂鬼」を思い出してしまいました。「どすこい(仮)」のやつ。
あのオビのパロディは酷すぎて素晴らしすぎました。


屍鬼 1 (1) (ジャンプコミックス)
藤崎 竜 小野 不由美
集英社
おすすめ度の平均: 4.0
5 期待と不安
4 なかなか
5 おもしろい!
4 閉鎖的な村で奇病が蔓延する
4 いいコンビネーションか

屍鬼 2 (2) (ジャンプコミックス)
藤崎 竜 小野 不由美
集英社
おすすめ度の平均: 5.0
5 ドロ〜ン
5 相性がいいです。
5 「藤崎色」が強いか。