「宇宙兄弟」2巻は、不運を才能と人の縁でカバーしているのが面白い



宇宙兄弟(2)/小山宙哉(Amazon)


モーニングで「宇宙兄弟」がかなり楽しみな漫画で、2巻もやはり面白かったですよ。
アポかわいいよアポ。



アポ。
アポロの”アポ”。



宇宙兄弟」は南波六太と日々人の、火星を目指す兄弟のお話です。
弟の日々人は宇宙飛行士になり、訓練をする日々。
一方、兄の六太は上司に頭突きをして会社をクビになり、今は宇宙飛行士の試験の真っ只中。


「日々人をバカにしたから」上司に頭突きをしたのが六太の人柄が表れていて、彼は弟想いの兄なのです。
それと同時に飛行士になった弟にコンプレックスも抱いています。
兄より優れた弟などいないと頭の片隅で思いつつも、日々人には敵わないと悲観的に考えることも少なくありません。



2巻は2次試験の合否待ちの期間の話で、具体的に六太にできることはありません。
「宇宙飛行士には運も必要」というのが2巻のキーワードのひとつになっており、六太は「ドーハの悲劇生まれだから」「不運に縁がある」と言います。
彼自身が積極的に動けることはなくとも、合否を決める為に彼のあずかり知らぬところで色々な思惑が交差します。
それこそ運が必要になってくる部分なんですね。前の会社の上司が話を聞かれたりしちゃうよ。


南波六太という男は実力と才能があるはずですが、お調子者なところがあり、面接の質問で「シャンプーがよく泡立ちます」と答えたほどに一歩足りません。
しかし憎めない男で、彼は何かやってくれる、彼と一緒にいたら楽しませてくれる、そんな気にさせてくれる。
だから、彼には人との縁があるんですよ。
弟の日々人はもちろん、幼少の頃に英語を教えてくれたシャロンおばちゃんや、昔出会ったJAXAの人に前の会社の後輩、日々人のアメリカの知人達…
彼らは六太の才能と人柄を信じ、不利な状況の彼に力添えしてくれます。
それは直接的であったり、間接的であったり。


確かに合否の判断が分かれるこの段階において不利な状況に陥ったのも、誰かが応援できるその出来事が起こったのも運です。
しかしそれを覆すことができたのは運だけじゃなくて、縁が大きかったと感じられてならないのです。アポも含めて。
そして、彼らの期待に答えれるだけの実力を見せてくれたのがもうね!



実力も才能もある。
でも本人はそれを自覚していない上に、性格的にどこかが抜けている。
それでも彼なら何かをやってくれるという期待をせずにはいられないのです。
だから「宇宙兄弟」は面白い。


宇宙兄弟 1 (1) (モーニングKC)
小山 宙哉
講談社
おすすめ度の平均: 4.5
5 火星到達をめざす兄弟の、夢とロマン溢れる壮大な絆のプロローグ
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