ハッピーエンドも悲恋も、「百合姫」は作品の幅が豊かになってきてる気がします。 - 百合姫 Vol.13
今回の百合姫は悲恋や、ちょい重めな作品が印象に残りましたよ。
明るくて両想いになってハッピーエンドな作品ばかりではなく、バリエーション豊かなのは雑誌として読んでいて楽しいですし、暗め・重めの作品もあってこそ明るいハッピーエンドな作品のどちらも引き立つというもの。
かずまこを先生のななお×松本のシリーズ「嘘つきエンゲージ」も一波乱あって、先が気になりすぎる続き方で、切なくて面白かったですよ。
乙ひより先生の「クローバー」は4話目で最終回。
メインの2人が恋愛的な意味でくっつきはしないものの、絆を深める終わり方はその後を想像せずにはいられないなぁ。
単行本は10月予定とのことで、4姉妹揃っての描き下ろしがあったらいいなと思うのです。
半熟乙女(小冊子掲載) / 森島明子
今号は付録で小冊子「Petit Wildrose」が付いています。
夏にコミックスが発売予定の、森島明子先生の「半熟女子」と三国ハヂメ先生の「極上ドロップス」を2話ずつ収録。
どちらも携帯配信されている漫画で読んだことはなかったのですが、どっちも面白い。
「半熟乙女」は女子校もので、「女子校は女であることを意識しなくてもいい」という雰囲気全開です。
「フィクションの女子校はファンタジーだよ」とは良く聞く話ではあるんですが、女しかいないことで気楽になっている女の子が妙に生っぽさを感じさせます。
生っぽいのは自然に見えるということで、そういう自然さがある森島先生の百合は素晴らしすぎる。
女の子らしい自分が嫌いな八重と、着替えの時に平気で全裸になるくらい男の子っぽいちとせの縮まる距離感がニヤニヤです。
2人を「恋愛ごっこ」と言う先輩のセリフがまた現実感を感じさせますね。
単行本が待ち遠しい。
瑠璃色の夢 / 森島明子
で、森島先生の本誌掲載はOLもの。
大人の百合が大好きな私にはこれはヤバイ。
ステキすぎてヤバイです。
同僚と2人で飲んで、目が覚めると彼女の家で、一緒に裸で同じベッドに寝ていたという。
告白されて、返事は保留にさせてもらって、会社での昼は今まで通り一緒にとるのが、何かもう見ていて幸せを感じます。
レズビアンと、そうでない”普通の”女性の間にある隔たりからすれ違いがあり、でも「好きならそんなものは関係ない」と”普通”の娘が言うのが良すぎですよ。
好きっていう気持ちが一番大切なんだよ!
接触 / 速瀬羽柴
せ、切ない…!
恋愛がよくわからないと言った女の子が、友達に「付き合ってみる?」と言われ、恋を知るお話。
地味だった娘が相手の娘といておかしくないように、と頑張ってどんどん可愛くなっていくのが微笑ましく、何より可愛いです。
不意打ちでキスされて、その日は帰ってからも噛み締めるような幸福感が続いている描写が良いです。
…が、その関係に唐突に終わりがきてしまうのが切ない。
相手にとっては軽い気持ちでの「付き合ってみる?」で、本当に好きな人ができたらおしまい。
一方は少女同士の恋愛は一時の気の迷いという感覚に近くて、もう一方は本気だという感覚のズレがあって切ないんですよ。
悲恋ですが、青春の甘酸っぱさが感じられるのが救いかなと思いました。
私はハッピーエンド主義者なんですが、たまに悲恋ものも読みたくなります。
この作品は面白い悲恋ものだと感じましたよ。