後輩の存在が成長を感じさせる - サプリ(7)



サプリ(7)/おかざき真里(Amazon)


読むジャンルの幅が拡がるにつれて面白いと思う作品も多くなるもので、同時に好みの変化…というよりもむしろ、自分の嗜好に確信が持てるようになります。
昔から「こんな漫画、すごい好きだ」と感じていた作風がその頃触れていたジャンルでは珍しいものであっても、実はターゲット層がまったく別の雑誌では当たり前の文法かもしれません。



人の好みは千差万別で人それぞれですが、私は多分、一般的な男性漫画読みとは嗜好にズレがあると思います。
私の場合は青年漫画である系統の作風がすごい好きだと感じたんですが、それは女性誌の表現技法・作風として光を放っていました。
ジャンルとしては少女漫画ではなくてヤング・レディース。
購読している月刊誌で、3本の指に入るくらい好きな雑誌のひとつが「FEEL YOUNG」だったりします。


そういう好みだということもありますが、私は「サプリ」がかなり好きです。
ただ、メインターゲットを成人女性とした雑誌の漫画だけに、おそらく受け取っている印象も読み取り方も本来想定されている読者と違うはず。
ターゲット層ではない私でも面白いと感じられるので、それだけ力がある漫画だとも思います。
まぁ、私の好みがズレていて少数派だというのもあるんだけど。

仕事と恋愛の、地続きな面白さ

「サプリ」は広告代理店に勤める藤井ミナミをはじめとして、女性の仕事と恋愛を描く漫画です。
メインの登場人物が男女ともに30歳前後で、歳相応の社会人経験とキャリア、それに裏打ちされた自信と意識の高さがあります。
そう、仕事に対する意識が高いんですよ。
自分の仕事に対する誇り、プロとしての誇りがある。
その仕事への意識の高さが面白さのひとつで、社会人のこの身としては意識的な部分で影響を受けずにはいられない。


広告代理店という舞台、そこに出入りするフリーのコピーライターの柚木の年収が不動産営業が羨むくらいに勝ち組で、読んでいてコンプレックスを感じるのですが、それ以上に仕事に対する情熱が羨ましい。
徹夜なんて日常茶飯事で、自分の仕事に情熱と誇りを持って打ち込む姿のなんと輝かしいことか。
7巻収録の分だと、

「あたしで」って言われちゃうとがんばっちゃうんだよね
「あんたでよかった」ってそう思ってもらうためだけに

のセリフが心に残ります。
「サプリ」はさりげない名ゼリフが多いと思う。



かといって前向きなことだけでなく、仕事である以上ネガティブになることもあります。
クライアントからの圧力や人間関係のストレスなどなど。
そういう時に浮上する術はいくつかあって、その中のひとつが恋愛なんですね。
恋人との時間が癒しになって、活力になる。
お互いの仕事時間の都合で中々会えなかったり、一緒にいる時間が必ずしもプラスになるとも限らないんだけども。


「サプリ」における恋愛は、確かにウェイトが大きいんですが仕事も同等で、それが良いんですよ。
人間、仕事が終わったからといってスイッチを切り替えるようにプライベートと切り替えなんてできません。生きているのは1人の人間なんだから。
以前の星占いのモノローグでもあったのですが、仕事も恋愛もリンクしていて当然。
だから、仕事の関係者と恋愛関係になるし、それがトラブルを呼び起こしもする。


藤井の後輩が友人を思って、友人と藤井が思いがけずなったトラブルを解決しようとした時に筋が通ってなくて、一喝した藤井に平野さんの教えが活きている感じがして嬉しくなったものです。
上司から学ぶことが多かった藤井が、まだまだ新人の娘の目にはすごい女性達の1人に映っていて、それが”恋愛的に”ではなくて”仕事におけるプロ”としての成長度合いの表現なのがゾクリとしました。



仕事ものとして読むと仕事に対する意識を高く持とうと思わされるのですが、私なんかは仕事的にも恋愛的にもコンプレックスを刺激されて羨ましくなってしまうのでした。
もっとがんばらなきゃなぁ。

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