まだ彼は本気を出せていない!走りながら成長する自転車漫画 - 弱虫ペダル(2)



弱虫ペダル(2)/渡辺航(Amazon)


2巻が発売された「弱虫ペダル」、1巻に引き続いて面白いです。
チャンピオン本誌の連載も毎回のように面白く、面白さの真っ只中だと言えましょう。
本当、毎回のように面白いんですよね。


そして熱い。
バトルとはまた別の、競い合う熱さ。
スポーツ漫画の熱さが「弱虫ペダル」には溢れています。



弱虫ペダル」の主人公・小野田坂道はオタク。
ただのオタクではなく、小学4年の頃からアキバまで往復90kmの道程を自転車で通っていたという非凡なオタクです。
買ってもらった自分の自転車が嬉しくて、その自転車で、自分の足で自分の好きなものが溢れる街へ行けるワクワク感。
当時の坂道少年はおそらくそんな気持ちだったんじゃないかなぁ。
そういう気持ちがあれば距離なんて苦じゃないんですよね。
でも、90kmの距離を毎週欠かさず、というのは凄いとしか言いようが無い。


そうして、坂道が急斜面をママチャリで登っているところを見た、自転車競技部の1年・今泉に勝負を挑まれます。
急斜面をグングン登る坂道が”登り”に強い理由も2巻で判明。
こうした、先天的な身体能力だけでない、環境と積み重ねの日々で自然と身についていた力というのが読者としては納得しやすくて良いですね。
そしてそれが花開き、覚醒していく熱さと言ったら!


”覚醒した”のではなくて、今はまだ”覚醒していく”その段階の途中です。



急斜面を鼻歌混じりにママチャリで登る異彩さを放っていた坂道ですが、本格的にスポーツとしての自転車をしていたわけではありません。
アニ研に入ろうとしたら部員不足で休止していて、部員集めに必死になっている途中でした。
むしろ体育会系の人は苦手。
だから自転車を速さを競うものとして見ていませんでした。
確かなポテンシャルを感じさせつつもそういう状況にいることに、ものすごい伸びしろを感じるんですね。


そしてそれを一気にではなく、少しずつ解放させていく演出と展開が熱くて堪りません。
1巻の今泉との勝負では、途中でサドルの高さを調整することで速度アップさせました。
しかしまだママチャリ、しかも速度が出ないように細工してあります。
2巻での、アキバで出会った鳴子との車を追いかけての走りでは、密かに付けられていた変速機と坂道のケイデンスの威力を発揮させ、市外での”壁”を鳴子に先導されてクリアする展開。
しかし、まだママチャリ。


ここまでポテンシャルを発揮させておきながら、まだ坂道が乗っているのはママチャリなんですよね。
どんだけマシンの方が実力に追いついていないんだという、発揮されていない力に期待が高まるというものです。
入部した自転車部で開催される、1年生対抗ウェルカムレースで坂道は初めはママチャリで挑むことになります。
まだベストな状態にしてもらえない。
段階を踏んで、少しずつ本来の力を出せるようになっていくのが熱いんですよ。
道具が揃っていない状態から揃えていくいく形なので、坂道本人の成長とは少しズレるのですが走っている途中で劇的に変わるのは震えがきます。



アキバで出会った鳴子も転校してきて、心許せる友達ができた坂道。
今泉にも一目置かれていますし、坂道には仲良くなれたキッカケの自転車がただ純粋に楽しいと思える。
その気持ちと、友達の存在、信頼できる人の存在がロードレーサーを手にした後の坂道を成長させていくはずです。
今までの話を読んでいると、走っている時でも成長は大いに期待できるので、今後の展開が楽しみでなりませんよ。


弱虫ペダル 1 (1) (少年チャンピオン・コミックス)
渡辺 航
秋田書店
おすすめ度の平均: 4.0
5 王道にして絶妙
2 なんだかな
5 これぞ少年漫画
4 2巻がすごい楽しみ