シニカルで不幸せな主人公に癒される、後ろ向きOL漫画 - ワンダフルライフ?(2)



ワンダフルライフ?(2)/ケイケイ(Amazon)


ゆるい漫画、まったりと和む漫画、動物がかわいい漫画などなど、読んで癒される漫画のジャンルは多岐にわたり、中にはいたたまれない漫画で癒しを得ることもあります。


主人公がどうにも幸せになれない。
不幸といえば不幸なんだけど、ドン底というわけでもない。
主人公のダメっぷりに自分と共通するところもあって身につまされるんだけど、自分よりもちょっとダメな気がして「自分はまだ大丈夫」と妙な安心を感じるっていう。
なんとも後ろ向きな癒しではありますが、そういうのが必要な時もあるんですよ。
そうしてそれを反面教師にして、気をつけよう、がんばろうと思うのです。


ワンダフルライフ?」はそんな漫画。
28歳独身のOL・矢野さんは2巻でも相変わらず、彼氏ナシ、貯金ナシ、ダイエット失敗、生活はなんかグダグダです。
何もしていないわけじゃないんですけどね。
苦手な言葉が「努力、行動」で、好みの男性のタイプが「正社員」なところから彼女の性格が推し量れるというものです。
基本ダラダラしている、長続きしない、詰めが甘い。
でもそれが共感できる。癒される。

ドラマとはいえ自分より幸せな女がさらなる幸せを手に入れる話なんてなにが面白いの?
共感どころか応援する気にもならないわよ

1話目からコレでしたもの。
共感という観点では全くその通り。
フィクションは、共感の点じゃなくて物語とか作品そのものを楽しむのが正解だと思うんですが、矢野さんは捻くれちゃっているのです。
そんな漫画。



女性誌連載でOLが主人公と、性差はありますが男でも身につまされるような話が多くて楽しめ…ます。
「グサッ」と胸に刺さるのではなくて「サクッ」と小気味良い音がしそうな、重大でありながらダメージはそんなに無い様な、ありふれていることだったり普段あまり気にしないような痛々しさを感じる出来事の数々。
生きていく上では問題ないんだけど、どうにも幸せを逃している、危機感を感じる生活。


クリスマスに独りだから、見かけるカップルを妄想で酷い目にあわせたり。
若い頃に書いた「10年後の自分の想像図」にヘコんだり。
ダイエットで腹八分目なのが足りなくて、「親戚はみんな太ってない。だから自分も本当は太らない体質なんだ」と自分を騙してドカ喰いしたり。
どうとも思ってない男(むしろキモかった)の誘いを、ヒマだからと受けていたら彼女認定されていたり。
しかもその人にフラれる為に策を練ったり。



個人的に2巻で一番印象に残ったのが、「鍋から直接食べたら女として終わり」の呪縛の話。
昔、クラスメイトに言われたその一言が強迫観念になっているという話で、「その恐怖は幻だ」、「気にしなければ楽だ」と考えが流れていきます。
曰く、部屋が汚くても性格が良ければ好かれる、普段の服がダサくても汚くても人格を疑われはしない、地獄に落ちるような罪じゃない。だから大丈夫。


いやいや、それは危険思想ですよ、矢野さん。
私も家で引きこもっている休日はダラけているけど、そういうのってクセになるんですよね。
普段から気をつけていないとイザって時にできない。習慣化してないとそんなに都合良くいかないものです。
こういうのってダメな例を見ると反面教師として気をつけようと思うもので、矢野さんもダメな人を見つけてハタッと気付かされます。
読者視点ではこの漫画自体が反面教師に見えるのですが、漫画内で矢野さんが気付いて、さらに漫画を通して読者が反面教師にできる形になっているのが面白い。



特に新キャラもなく、人間関係も変わらず、矢野さん以外のメインキャラもダメな感じが漂ってます。
自分で意識して行動しないと環境も変わりにくいってことも感じる2巻でした。


ワンダフルライフ? 1 (1) (ワイドKC キス)
ケイケイ
講談社
おすすめ度の平均: 4.0
4 脱力感たっぷりかつシニカルなヒロインが
4 なぜか憎めないシニカル喪女矢野さん