仲間がいるから続けられることと、伝わっていく情熱 - ちはやふる(2)



ちはやふる(2)/末次由紀(Amazon)


DAIさんの感想をはじめとして各所で話題になった1巻がすごく面白くて、私なんかは連載をチェックするまでに至ったくらい面白い「ちはやふる」。
競技かるたというあまり馴染みがない世界が題材ではありますが、そこにある輝きと情熱は確かなもので、読者を惹きつけるほどの光を放っています。


夢中になれるもの・目標を持った人との出会いを通じて、夢中になれるものに出会い、さらに多くの人と出会い関わりになっていく。
”夢中になれるもの”はそれ自体が楽しいのもあるんですが、やっぱり一緒にがむしゃらに楽しみを共有できる人がいてこそなんですよね。
人と接することであれば特にそうですし、それが遊びを超えたものになってしまえば尚更です。


小学生時代の終わりと、再会する高校時代の始まり

千早と新と太一もかるたを通じてできた仲間で、新と太一に一悶着ありつつも、ひとつのチームとして大会に挑みます。
2巻はその続きから収録しています。
トーナメントの大会は当然ながら、優勝以外は負ければ終わってしまうもの。
福井に帰る新、別の中学に進む千早と太一、バラバラになってしまう3人にとっては大会の終わりはそれ以上の終わりでした。
かるたで仲良くなって、楽しさも悔しさも情熱を共有した仲間との日々が終わる辛さ、寂しさ。
小学校を卒業して離ればなれになってしまうけど、かるたをやっていればいつか会える――
そう信じて小学生編は終了します。



次は中学…かと思いきや、いきなり高校生に成長した千早が登場。
ちはやふる」は千早と新と太一の物語だと認識しているのですが、やはりバラバラになった中学生の日々は長々と描くべき話でもないよなぁとも思うのも確か。
それでも、描かれなかった中学時代にただ黙々とかるたを続けていたわけじゃないんですよね。
仮に、小学生時代で完結の漫画であれば、再会した数年後に「さあ、一緒にかるたをしよう!」というエピローグが入りそうなものですが、そうはならない。


かつての仲間がいない3年間は長くて、再会したからといって以前のようにかるたができるわけではない。
子供の頃の約束は、幼いが頃の幻想かもしれない。
あの約束を覚えいるけれど、すんなり成長させることなく、まっすぐに進めなくて心にしこりを残して成長しているのが面白いです。
1話の冒頭がクイーン戦の千早で、小学生編が6年前なので高校3年。
ここからが本格的な「ちはやふる」なわけですよ!

仲間がいるから情熱を持ち続けられるんだ!

一緒にかるたをする仲間と離れ、かるた部もなかった中学時代。
千早は陸上部に、太一はサッカー部に所属していたのですが、その理由は全く違うものでした。


完全に趣味として割り切って他に楽しいことも彼女も作っていた太一に対して、全てをかるたに繋げて考えていた千早。
情熱を持ち続けている千早と、情熱を燻らせている太一が対比的な関係になっています。
「青春をすべて懸けたって新よりは強くなれない」と言う太一と、ただただ真っ直ぐに新を追いかける千早の真っ直ぐな情熱。
千早の対戦相手も、長年上の級に上がれず苦しんでいる人でしたがかるたが好きな人で、そういう人からは伝わってくるものがあるんですよね。オーラを放っている。
そういった熱は人を触発させるもので、燻っていた太一のかるたへの情熱にも火を点けます。
触発させた方の千早も1人じゃなくて、仲間が必要だと言うのが良いですね。



かるた会の原田先生が太一を覚えていて、下ネタを言って再会を喜ぶのも良かった。

”青春ぜんぶ懸けたって強くなれない”?
懸けてから言いなさい

の言葉は心にガツンとくる名セリフだと思いました。



新は新で日々を過ごし、ネタバレにしかならないので多くは書きませんが、ある原因があってかるたを止めてしまっていました。
千早にとってのかるたは新の存在が大きく、新にとっての同様の構図と絡めて描かれているのが印象的です。
千早と太一が福井まで行き、3人は再会、熱を取り戻す新と恋愛の予感
かるた部設立で、新しい仲間と足りないものを千早は得ていく形なっていくことと思います。
これからも先が見逃せません。



ちはやふる 1 (1) (Be・Loveコミックス)
末次 由紀
講談社
おすすめ度の平均: 5.0
5 最高!
5 この面白さは、まさに読まなきゃわからない
5 これは買いです・・。
5 なにはともあれ、まったく知らない世界を見せてくれて、単純におもしろいのだ。
5 何回も読み返してます