4人家族の4コマ。一番の主役はお婆ちゃん。 - うちは寿!(1)



うちは寿!(1)/小池恵子(Amazon)


私は4コマ漫画は複数人の個性ある登場人物達が日常を回し続けていく、それが魅力だと思っています。
物語が展開していくストーリーものの4コマも本筋に入るまではこの要素はありますし、少しずつ関係が変化していく4コマにおいては面白さの大部分は日常なんですよね。
最終回付近まで大きく関係が変化しない4コマなんかは言わずもがなです。
4コマでは、日常を構成する”舞台”と”登場人物の個性”がとりわけ大切なんですね。



さて、小池恵子先生の「うちは寿!」の1巻が発売されました。
タイトルの通り、主人公達の家庭はおめでたい家族です。
苗字も”寿”です。まんまですね。
でも、解りやすさが4コマに大切なことでもあります。


寿家は4人家族。
長女・万里(32)、次女・美鶴(17)、長男・千宏(7)、祖母・かめ(80)の4人です。
「鶴は千年、亀は万年」が名前の由来。めでたい!
見ての通り、年齢層が幅広くバラエティに富んでいます。
妙なバラエティの豊かさだとは思いますが、これが寿家の家族の個性でもあります。


孫3人の年齢が離れすぎていて、お父さんとお母さん頑張りすぎだよ!
お気づきのことかと思いますが、お父さんとお母さんがいません。
死別してしまったのか、仕事で離れているのかは作中で語られていませんのでわかりません。
でもそんなことは関係なく明るい寿家は、この4人家族です。
ちなみにお爺ちゃんはお亡くなりになっているので、かめさんはフリーです。

くどくなりすぎない、個性

前述の通り、4コマ漫画は登場人物の個性が面白さに繋がります。
とりわけ平綴じの4コマ誌では、親しみやすさと読み手を問わないネタの広さが面白さだと思うんですよ。
だから個性は強ければ強いほど良いと言うものではなく、くどくならない程度が丁度良くて、小池恵子先生はベテランだけあってサジ加減が上手いです。
名前のあるキャラは家族の4人だけですが、その4人だけで話が作れる安定感があります。



長女の万里は一家の大黒柱で、階級は係長。仕事のデキるキレイなお姉さん。
でも家事は壊滅的で、それでも料理好き。
料理下手の自覚はあって、料理を失敗した時の心情が仕事上の会話やアドバイスに繋がっているのが面白いです。
結婚や恋愛には全く興味なし。


次女の千鶴は、家事を完璧にこなすクールビューティー。万里曰く、器用貧乏。
寿家で一番の美人さんだと思うんですが、滅多に笑いません。
そして婆むさい。きっと、お婆ちゃんよりも。
恋愛にはあまり興味なさそう…というかストライクゾーンがズレてる。


一番下の千宏は、子供らしく「早く大人になりたい」と大人に憧れる子供。
だからか、家族の観察をよくしてるんですが、子供ゆえの認識のズレがまた微笑ましい。

主役はお婆ちゃんだよ!

個人的には、この漫画の主人公はお婆ちゃんのかめさんだと思うんですよ。
連載で読んでいた時は間違いなくそう思っていて、まとめて読んだら4人ともまんべんなく出番があるんだけど、やっぱり印象に残るのはかめさんなんです。


寿かめ、御年80歳。
寿家で一番ミーハーで、一番乙女です。
そうなんですよ、一番乙女で女の子女の子しているんですよ。
お婆ちゃんキャラが活躍しているだけで目を惹くのですが、内面的にも印象に残るのです。


若ければ可愛い服を着たいと思うのは普通だと思うんですが、若ければエステに行ってダイエットしてその上で可愛い服を着たいとリアルに思う乙女心。
男性アイドルのチェックは欠かさず、見るドラマはイイ男基準。
好みのアイドルや男優があれば、写真集やらグッズも揃えるし、体力があればきっと追っかけもしてる勢いすらあります。
万里の会社での、テレビ関連の話題のソースはお婆ちゃん。
買い物先のお店では観賞用のイイ男のチェックは欠かしません。
あわよくば、万里や千鶴に彼氏候補を紹介してもらおうとしてるんだから、心が若すぎる。


でもいい大人なので分別はあるし、単なる男好きなキャラという印象ではないのは見せ方が上手いのと年の功と言ったところでしょうか。



小池恵子先生の連載中の作品だと「おかあさまといっしょ」が大好きでして、こちらも1巻が12月発売予定とのことで楽しみ。
「おかあさまといっしょ」は嫁と姑の4コマで、表面上は仲良し、でも内面では負けまいと火花を散らしている4コマです。わたしたちうまくいっています。
こっちはレギュラーキャラが2人+電話で声だけ出てくる単身赴任の夫、という極少人数で展開しているのが面白いですよ。