1つの話の完成度が高く、全体での人の繋がりが素晴らしい群像劇 - 駅から5分(2)



駅から5分(2)/くらもちふさこ(Amazon)


駅から5分」を初めて読んだのは雑誌の立ち読みで、1話目ではない途中の話でした。
それでも戸惑うことなくすんなり読めたのを覚えています。
キャラ紹介の人数がやたらと多く複雑だったのが印象的でした。
次に読んだのはその次の号。
話が前回から続いていないことに戸惑いましたが、相関図をよく見て納得。
同じ街を舞台に別々の人の話が展開されている、と気付くのにそれほど時間はかかりませんでした。



私はくらもちふさこ先生の漫画を読むのはこの「駅から5分」が初めてなんですが、そんな私でも名前は知っていたくらいの大ベテラン作家の連載中の作品です。
花染駅を下車して5分。
駅の周辺だけが舞台ではありませんが、そんな駅から5分の街で織り成されるクロスオーパー作品です。


同じ人物の話が連続することもあれば、全く別の人物の話になったり、かと思えば同じ出来事を別の人物視点で描いた話だったり。
なので1つの話を単体で読んでも楽しめる話も多く、それぞれが短編としてもかなりデキが良くて面白いものになっています。
実際、途中から読んだ私は違和感なく楽しめました。


かといって、続けて読んで楽しめないかと言えばそんなことは全くありません。
時系列は前後したり、話の舞台が変わりますが、どれも同じ街の話であり全ては繋がっています。
大まかな舞台は、小学校、中学校、高校、大学あたりで、それぞれに別の年代と繋がりのある人物がいますし、思いもよらないところが繋がっていたりしてそういう発見が楽しいんですよね。
そういう群像劇の人間関係の繋がりに喜びを見出せる人なら楽しいはずです。



群像劇だけあって登場人物が多く、相関図が単行本の最後に掲載されています。
その人間関係の絡みが魅力で、話が進む毎に人数がますます増えていくんですよ。


1巻の相関図。23人。


2巻の相関図。26人。


増えた人数は少しですが、関係を示す矢印が複雑になっていてそれだけ人間関係ができています。
限定された舞台の物語なので、時間が経つにつれて所々が繋がっていくのが必然でもあって、読んでいて嬉しい。
まだまだ登場人物は増えます。男子生徒相手に事故を起こしてしまったタクシーの運転手とか。



肝心の話の内容は、悩みを持つ人や誰かと出会ったことで心の中を占めるものができた人が、さらに人と出会いふれあって進展したりすれ違ったりするもの。
心温まるものであったり、切なさを残すものであったり、1話1話の完成度は高いと思います。
ひとつの話はそこで終わっても彼らの日常は続いていて、別の人の別の角度からの話とリンクしているのを見るとニヤリとしますよ。
例えば、旧友に会いに行った女性の乗ったタクシーが男子中学生相手に事故を起こしてしまい、彼女が会いに行った相手の娘が男子生徒のクラスメイトで、それらは別々の話として描かれます。
1話だけでは繋がりが分かりません。
数話読んで見えてくる相関図こそがこの漫画の醍醐味なのかもしれませんね。


駅から5分 2 (2) (クイーンズコミックス)
くらもち ふさこ
集英社
おすすめ度の平均: 5.0
5 進化し続けるくらもちふさこ

駅から5分 1 (1) (クイーンズコミックス)
くらもち ふさこ
集英社
おすすめ度の平均: 4.5
5 くらもちさんは一体幾つなの??
1 個人的に・・
5 持っていたい本
5 やっぱりマンガはくらもちふさこです
5 さすが!