愛と義が交錯する、破滅的な物語 - 刺青の男



刺青(しせい)の男/阿仁谷ユイジ(Amazon)
阿仁谷組インフォ(作者サイト)


阿仁谷ユイジ先生の3冊目のBL単行本「刺青の男」。
タイトルから連想される通りの、4話からなるヤクザがメインとなる話を収録したBLです。
他に、2話構成の生霊ものを収録。


何という描画技法なのかは知らないのですが純和風のカバーデザインは味があり、その中で全く別のタッチで描かれている刺青が映えています。
なるほど、”刺青の男”だ。
表紙イラストをアレンジしたポストカードが封入されていて、こちらも良いですね。



BLは恋愛漫画のひとつの表現の形で、愛情を描くもので、性差を超えて気持ちを通わせて結ばれるその情の強さが醍醐味だと思っています。
恋愛漫画好きとしては、恋愛にウェイトを置いてハッピーエンドというものが好きです。
その一方で、中には男同士の関係ならでは、BLでしか描けないんじゃないかと思える作品も存在します。
そういう漫画は、いち漫画好きとしてすごく面白い漫画に感じられます。
「刺青の男」もそういう漫画であり、”愛”と”義”の入り混じったBLです。



人の道を踏み外した幼なじみが転がり込んできた、という出だしから始まる話はそのままセックスに雪崩れ込み、ラブいコメディな感じもさせます。
再会はゲイパーティーということ、モノローグも手伝って、受の背中に刺青があっても明るい感じがします。
ところが受(=ヤクザ)の懐から拳銃が出てきて、あれよあれよという間に愛する人の手で刑務所行き。


1本目の話だけ見ればそれだけの話なんですが、続く話を読んでいくにつれてどんどん暗くなっていきます。
4話全てで見れば相当に破滅的な話で、初めが明るめだっただけにその落差は大きい。
なもんで、読むのであればなるべく予備知識なしで読んだ方が楽しめる漫画で、色々感想を書くとネタバレになりかねないのが口惜しい。
4本目はかなり悲惨で、愛情はあるもののその愛情ゆえに相手を壊してしまい、ある意味で未来をも壊してしまいます。
一緒に堕ちていく中で、今この瞬間の愛情だけは確かなものであると。



1本目のメインカップルの話で受が逮捕されたことが、2本目の受の上司の決断に影響を与えてそれが4本目に繋がっています。
3本目は、1本目の攻と別のヤクザの話でテーマが4本目に通ずるものがあるはず。
1〜3本目は雑誌掲載されたものでそれぞれ単体でも楽しめるものになっているのですが、それらが集束する描き下ろしの4本目は救いのない話だというのがもう。
それぞれがそれぞれに愛も義も貫ければ良かったんだろうけど、立場が違う者が関係すればそうはいかないもので、絡み合って最悪に近い方へいってしまった。


バッドエンドだからこその儚さと色気に溢れている、面白い漫画です。
ただし、暗いです。バッドエンド。

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阿仁谷 ユイジ
茜新社
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5 どうしようも
4 ごめんなさい
5 決して万人受けではない
5 今までと違う
5 かなり重いので好き嫌いが分かれるかも・・・。

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