正統派の面白さに満ちた少女漫画 - お願い、せんせい



お願い、せんせい/タアモ(Amazon)
rum(作者サイト)


先日参加したオフにて「表紙買いした漫画をランダムに交換して、貰った漫画を紹介しよう」という企画がありまして、そこで頂いた漫画がかなり良かったのでご紹介。
タアモ先生の「お願い、せんせい」です。



ベツコミに掲載された3編の短編を収録した単行本で、掲載誌がベツコミだけあって正統派な少女漫画の面白さに溢れてます。
私なんかは20代も後半なので少女漫画よりも女性誌の漫画を好んで読んでいるだけに、正統派な少女漫画の面白さを再確認した次第。
さすがにベツコミは読者層から外れているからチェックしてなかった。盲点。(でも別マは読んでる。)



収録している短編は、女子高生と塾講師の教師もの、士族と別れた女の息子と田舎の女の子の恋愛もの、好きな人が欲しい女の子と感情の薄いイケメンの恋愛もの。
どの作品も淡い恋心と不安、キラキラとした雰囲気があって、奇抜にならない程度のヒネリもある。
短編とはいえ、それぞれ40ページ程のページ数があるので読み応えもあります。



まっすぐに相手の男の子が好きな主人公の女の子たちも良いんですが、この単行本は男側が良いです。
3人とも感情の起伏というか感情を表になかなか出さないタイプに見えるけど、感情が薄いわけではなく内に熱いものがあります。
教師という立場から頑なに一線を引いていた塾講師の男の本音は可愛らしいですし、哀れな母親の意向に沿うようにしていた士族の子が幼なじみの女の子を選ぶのも良いんですよ。
女の子たちは手に入れたら興味が失せてしまう子だったり、恋心をまだ知らなかったりするけど、本質的には相手に一途で、想っているだけでなくアクティブに動きます。
そうして動いていくことで、立場や状況から気持ちを抑えて隠している男の子の、普段は見せない本音に近い一面を引き出すのはまさに王道。
オチは王道な展開だけに読めるものではあるんですが、それだけにハッピーエンドのベタさが気持ちいい。



ただ、前述の通りキャラの感情の起伏がちょっと弱く感じることは欠点に思います。
男の子は同系統のキャラに見えてしまいますし、女の子も激しい感情は迫力が薄いかもしれません。
しかしそれらも雰囲気に繋がっていて、静かな怒りや不安といった方向での感情描写は上手いと思います。



少女漫画の短編は面白いものが多くて好きなんですが、個人的にこれは本当に当たりでした。
既刊も買おうと思ったくらい。というか買う。
人の好みはそれぞれなんでアレですが、少女漫画での短編や読切が好きな方なら楽しめるんじゃないかと。