4者4様、4姉妹の百合物語　-　クローバー - なんてことない毎日の趣味と生活と投資活動

クローバー/乙ひより(Amazon)
君鳥翠(作者サイト)

乙ひより先生の2冊目の単行本「クローバー」はオムニバスで綴られる4姉妹の話で、収録されている話全てが「クローバー」です。
乙先生の初の連載ということで、毎回ワクワクして読んでおりました。
4姉妹でクローバーだから四葉ですね。
だからといって幸せな恋の話ばかりではないのがミソ。
しかし、どれも様々な形の素晴らしい百合です。

話のメインとなるのは、一花・風香・美鳥・卯月の橘家の4姉妹。
けっこう歳の離れた姉妹で、風香が高校生の時に卯月は小学生、一花が高校生の時には美鳥と卯月は小学生くらい。
美鳥が高校生の時にも卯月は小学生に見えるけど、4つくらい離れているのかな。

まぁ、どれだけ年齢が離れているかは本編にはあまり関係ありません。
何故なら、彼女達それぞれの高校生時代の出来事を描いているから。
オムニバス連載という形式の使い方が上手いと思います。
掲載順は末の妹の卯月から順に最後は一花となっていて、大人の姿を先に出しておいて青春まっただなかの姿を描く形なのが良いです。
読み返してみると、メインになっている妹と一番話していたり目立っている姉妹は1つ上の姉なんですよね。

4姉妹それぞれの恋の話…とは限らない百合が「クローバー」の面白さのひとつです。
四女の卯月の話はこれから特別になっていける友情ですし、視点が姉妹以外の女の子の話もあります。
女の子に想われる側に橘さんがくる形ですね。その橘さんはその女の子を大切で特別に思っているけど、恋愛の対象としては見てないっていう。
友情、想われる恋、そして成就する恋と失恋。
4者4様の関係はいずれも確かに百合で、そのどれもが素晴らしい百合です。

ハッピーエンド好きなので個人的にはやはり美鳥の話が好きです。
バイト先で知り合い、お試しで付き合うことになった女の子・杉浦とのお話。
お試しでも付き合うからには全力という美鳥の少しズレた本気も良いですし、彼氏ができるまでという条件でのお試しが終わりそうになっての2人のやりとりは幸福感に溢れています。
描き下ろしもこの2人の話で、やっぱり一緒にいてちょっとすれ違っても想い合っている姿が見れて良かった。
他の姉妹の後日談も見たかったんですけどね。

乙ひより先生の百合は、女の子が変にフィクションのキャラクター然としていない自然体な感じが良いです。
季刊誌である百合姫ではなかなか難しいかもしれませんが、そんな魅力的な女の子と柔らかい作風での連載も読んでみたいものです。
百合姫で連載して、百合姫Sで読切をちょくちょく掲載とかして頂ければ嬉しいです。ほら、森島先生が携帯で連載、百合姫で読切をされてらっしゃいますし。

…今思いついたことですが、意外と妙案なので百合姫のアンケートに書いてみようと思います。
せっかく2誌あるんだし、色々な作家さんの色々な百合を読みたいじゃないですか。