情熱と下心と嘘が交差する、ゲーム開発漫画が面白い! - 大東京トイボックス(3)



大東京トイボックス(3)/うめ(Amazon)
難民チャンプ(作者サイト)


大東京トイボックス」が面白いです。
いや、「東京トイボックス」の頃から面白かったんですが、面白さが失速していないどころかますます面白くなっていて、連載が毎月楽しみです。
個人的に、今トップクラスで好きなお仕事漫画のひとつでございます。

ゲーム少年心をくすぐって止まない!

大東京トイボックス」はゲーム業界を舞台とした漫画で、ゲーム開発会社に勤める天川太陽が主人公。
3巻オビのコピーが「ゲームを愛する全ての人々に捧ぐ!!」で、ゲーマーな人にも元・ゲーマーにも楽しめる漫画なんじゃないかと。


私なんかは今は時間がなくてほとんどゲームはやってないんですが、昔は結構ゲームっ子だったので凄い面白く読んでます。
なんかもう無性に懐かしい気持ちにさせられる。
私の勝手な感覚ではあるんですが、ファミコン世代の人がもっとも楽しめるように思います。
ファミコン通信やその他ゲーム誌に載っていた、実際のメーカーの人や業界ネタを扱った漫画の数々、時間があったがゆえに隅々まで読んでいたコラムやインタビューなどの記憶が呼び起こされる。
あれらはギャグを織り交ぜたものではあったんですが、ゲーム業界・開発は忙しそうで楽しそうだと子供心に思わせるのに十分でした。



そんなゲーム少年心をくすぐりつつ、楽しいだけじゃないシビさに溢れていて”大人になったゲーム少年”を引き込む魅力に溢れた漫画になっています。
納期に、バグによる仕様変更、資金の問題、大手メーカーとの軋轢…憧れていただけの子供の頃には考えもしなかったことですが、むしろそれらがこの漫画のメインでもあります。
そして情熱も確かにある。迷ったり燻ったりするけども。

3巻は、チームワークの不和が面白い!

3巻では、大手ソフトメーカー・ソリダスの共同開発事業「SOUP」の真っ只中。
第1次審査で太陽は発想力の非凡さを見せ付けたものの、ゲームは1人で作るものではないんですよね。
プログラマーのマサの暴走によって雲行きがどんどん怪しくなっていくのが3巻の面白さでしょう。
しかもマサの担当しているプログラムの進捗を天川達が把握していない上に、勝手に莫大なライセンス料のかかるツールを使用申請したりと、胸が高鳴る危うい面白さ。
さらには、このプロジェクトが電算花組との共同プロジェクトなので、他社に迷惑がかかってくるので胃がキリキリします。
今思うと、花組の半田が1次審査の問いに「チームワーク」と答えたのが象徴的です。



マサの暴走が、自分の力量の過信とプライド、気になる異性であるモモに良いところを見せたい下心なのがもうね。ジリジリする。
「俺が本気になればできる」とまではいかないまでも、自分の勝手な判断で行動してしまうのは誰しも経験する失敗だと思います。
考えて仕事していて、より良く効率的にしよう、としてのことだろうから。
大東京トイボックス」は、仕事+αで何か固執してしまっての失敗を物凄く面白く魅せてくれています。


3巻は、モモへの下心と太陽への嫉妬とプライドでプロジェクトに挑むマサと、太陽への憧れと仕事への情熱で行動するモモが対比的なのも面白い。
夢を諦めた過去があるマサにとって、情熱に溢れるモモが活き活きとして映っていますし、自尊心を守る為に引きこもって嘘をついたことがあるモモと、順調に進捗していると嘘をつくマサは対比される形でありながらも大きく違うんですよね。
夢が破れているか今夢に向かっているかという違いもありますが、モモがマサを助けるのはマサのためじゃなくて”天川と仕事をするため”なので。
モモがそのためなら何でもする覚悟を見せたくだりは名場面すぎる。
過去のマサにそういう覚悟があったかどうかはわかりませんが、好きな女のそんな覚悟を前にして手を出したら男じゃねー!
ヘコみつつも、やるしかない。


とはいえ、最新号(11月号)の分まで単行本に掲載されているのでマサとモモがどうなっているかはわかりません。
先が楽しみすぎます。