勇者 日下部太朗と喪服の騎士団 - 惑星のさみだれ(6)
惑星(ほし)のさみだれ(6)/水上悟志(Amazon)
続・みずかみ小屋(作者サイト)
「惑星のさみだれ」6巻は日下部太朗と宙野花子の物語です。
そう断言して差し支えないでしょう。
幼なじみの2人に突如訪れた関係の大きすぎる変化、あまりの現実に打ちのめされ、呆然とし、立ち上がり意志を継ぐ…
いや、”意志を継ぐ”っていうのは適当じゃないですね。
彼の成し遂げられなかった夢を、夢を持たない自分が目指すことで彼の存在を自分の中で生かしていく。
うん、こっちの方が合ってる。
そう、6巻で起きた出来事は太朗の死です。
○第37話 勇者 日下部太朗
○第38話 日下部太朗と獣の騎士団
○第39話 黒竜
○第40話 騎士 宙野花子(前編)
ここの管理人は「惑星のさみだれ」が好きで好きで、連載中は多分年間トップに挙げる勢いで好きで、「惑星のさみだれ」を最大の目当てとしてヤングキングアワーズを購読しています。
で、雑誌連載分の感想を書いたり書かなかったりしてます。
幻獣のランクアップの予想とかは外れてますが、概ね毎回感じていたことは単行本で読み返しても感じました。
あと深読みしすぎだ、自分。
月刊連載なので1話ごとに1月開くわけですが、連載で随分前だと思ったことが単行本で読むとそうでもないことが往々にしてあります。
「惑星のさみだれ」は2、3話前に張っておいた小さな伏線を上手く活用しているなぁ、という印象がします。
というか、落とし穴で思いました。
落とし穴掘ってた時は半分ネタだと思ってたんだけど、読者も夕日や三日月も笑いたくても笑えない場面で使うとは。
10体目は深読みしすぎてもっと前に別の形で出てたと思ってたら小さいのでした。
勇者・日下部太朗
さて、太朗です。
死んでしまいました。
泣きました。
キルには「無駄死にだ」と言われましたが、無駄なんかじゃありません。
人に愛され、多くのものを遺したのだから。
「惑星のさみだれ」において、各話のサブタイトルの多くは「○○と××」という形が付けられるのですが、個人にとって大きなキッカケとなる出来事がある話は「騎士 ○○」となります。
扉絵はビスケットハンマーを背に、甲冑姿で描かれます。
それで、第37話は「勇者 日下部太朗」。
一連の展開を知った後では、”騎士”ではなく”勇者”となっているのがこれだけで震えがきました。
第37話の扉は私服の太朗なんですが、6巻のサブタイトルが「勇者」で6巻の扉が勇者姿の太朗です。
1話単位じゃなくて、1冊単位の出来事なんだよ!そう思わせておいてくれ!
契約の願いで1回なら花子は死なないと知っていたのに、庇った太朗。
願いを花子が少しでも生き延びる為に、身体を花子を護る為に、結果的に命を花子が人生を歩んでいく為に遣った形になります。
「彼こそ真の勇者だ」はノイの言葉ですが、花子という自分以外の為に全てを人間は勇者だと思います。
”人類”とか”地球”とかじゃなくて、誰か1人の為だからそれだけのことができたのかもしれません。
思えば半月も師匠も、不特定多数じゃなくて”限られた数人”の為に命を遣ってました。
1人の人間に護れるものなんて僅かで、だからこそ護られ遺された者は強くその人のことを忘れまいとするんでしょうね。
だから、花子が掌握領域に”勇者の剣”と書いて”クサカベ”と読む名前を付けた場面はだだ泣きしました。
無目的であった花子が、感情と目標とそれ以外の様々なものを得られたと、そういうモノが詰まった場面だと思います。
太朗の死と、喪服の騎士団が6巻の個人的な泣きポイントですが、勇者の剣のページはそれらを集約した感じすらしました。
フクロウの騎士 茜太陽
ところで、喪服の騎士団と言えば茜だけ喪服ではありませんでした。
ポジション的にアニムスの側に近いから、というのもあるからだろうなぁ。
その中で喪章だけは付けているのが今の茜の立ち位置なんだろうか。
喪章を風巻さんに借りたのも面白いところですね。
あとは、年齢的に喪服を持ってなかったってのもあるかもしれませんが、それは考えすぎです。
昴と雪待が中一ながら喪服を持っているのは、師匠が死んだ時に2人で買ったからと思えば茜が持ってないのも不思議じゃない、とか考えてました。
第36話が茜の掘り下げの話、家族と契約したての頃の話で、家族の愛に恵まれていないことが描かれました。
そういう家庭環境もあってコミュニケーションや対人感情に欠けるところがあるんじゃないか、と。
他人と一緒に食事した経験に乏しいから、夕日と南雲さんと食べたラーメンを美味しく感じたのは確かでしょう。
そういう実感できないものがある茜が、太朗の死に触れて多少なりとも揺り動かされたように、今後も色々なことを経て変わっていくんだと思えてなりません。
アワーズの今月号が今日発売だったんですが、ハデな動きはなくとも面白いなぁ。
年少組の話で茜に関してはやっぱりそんな感じだろうな。
昴と雪待の友情は良いですね。
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続きが楽しみで仕方ない一品