自覚した恋心を打ちのめす、彼女の元彼の存在 - GIRL FRIENDS(2)



GIRL FRIENDS(2)/森永みるく(Amazon)
ミルミルム(作者公式)


クラスメイトから友達へ、友達から親友へ、そして親友から片想いの相手へ。
GIRL FRIENDS」の魅力はステップアップしていく感情にあります。
その気持ちの変化は恋愛状態特有の幸福感と絶望感と、同性相手ゆえの葛藤に彩られています。
タイトルの「GIRL FRIENDS」からハッピーエンドは揺ぎ無いものだと思う*1んですが、感情と心の距離の変化が見事すぎる。



1巻ではクラスメイトから徐々に仲良くなって親友になり、気持ちの自覚がないまま思わず寝込みにキスをしてしまうまででした。
2巻においてはキスという行動から自分の気持ちを考え、悩んだ末に恋心を自覚します。
自覚した恋心によって、今まで自然に接していた親友に対してギクシャクした態度をとってしまったり、彼女の一挙手一投足一言動に至るまで気になってしまう。
それは恋だ、紛れもない恋だ。
抗えない恋心によって彼女がより輝いて見えるし、一緒にいたり笑いかけてくれるとこの上ない幸福を感じる。
反面、他の誰かが近づいたり、彼女の恋の話―過去の話であっても―を聞くと心が黒くなる。
人を好きになるとどうしようもないよね。



1巻は友達として仲良くなる過程+自覚のない好意を見守る感覚で、第三者からするとじれったくも微笑ましいようなものでした。
2巻は恋心の自覚があるので心理描写の深度はより深く、物語の揺さぶりとそれによる黒い感情にドキドキしっぱなし。
連載で一通り読んでいるにも関わらず、丸々一冊ドキドキしっぱなしで読んでました。
まりにとってショックな出来事もありますしね。
ふと、ドキドキの質が恋愛状態のそれだと気付いてビックリした。
自分が片想いの時に感じているのとほぼ同じ感情って、自分はこの漫画がどんだけ好きなんだ。
いやいや、それだけ特定の人に影響を与えるくらいの心理描写だということでひとつ。

恋心の自覚と、耳にした絶望

※以下、激しくネタバレしてるんで収納ー。



それで、まりにとってのショックな出来事というのが”あっこの初えっちの相手”の存在を耳にしてしまったことで。
これは読んでいるこっちもショックで、連載で読んだ時には思わず取り乱したほどです。


主人公=読者という形で描かれている作品以外は、私は基本的に第三者視点で読んでいます。
でも、感情移入はします。
全くの傍観者ではなくて、友人・知人に見るような「主人公達の恋が上手くいくと良いなぁ」という視点に近い感じ。
だから応援もするし、ショッキングな出来事があれば胸や胃が痛くなります。のめり込みすぎだ。



で、第9話のラストでまりの胸に刺さった棘は読んでいるこっちにも刺さったわけです。
こっちは年齢だけみればいい大人なので(精神的にも大人かどうかは自信がない)、別に処女信仰があるわけではないんですが、初恋の真っ只中の高校生にとって片想い相手が経験済みって知らされたらそりゃあショックです。学校なんて行きたくないよ!
大人になっても死ぬほど好きな相手の過去の恋人の話なんて聞きたくないですし、初恋なら身を裂かれる思いでしょう。
ジェンダーの絡むことは難しいね。



そしてもうひとつ。これが百合漫画にとっては重要なところです。
あっこが経験済みと聞かされることで、あっこはストレートの異性愛者で自分の恋は実らないと思い知らされる形になります。
まりの場合は聞いた後のショックの最中に自分の気持ちを自覚するんですが、この”同性だから実らない”ことは大きく心に残り続けます。
相手がいることだからこその悩み・葛藤と、それを踏まえた上でのコミュニケーション、同性であることを乗り越えた恋愛が百合やBLの醍醐味のひとつなんですよね。
さらに「GIRL FRIENDS」は登場人物が今普通にいる歳相応の少女達で、(このくらいの年齢の子と接する機会はないけど)やたらと生っぽくて雰囲気があるのが良いです。



読者に対して刺さった棘は抜けるのですが、まりの心にはまだ闇があって自暴自棄気味な行動にでてしまいます。
そうして勢いのままあっこにぶつかり、あっこはまりの気持ちにどう応えるのか、2人はどうなっていくのか。
今後とも楽しみで胸がドキドキします。

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*1:なんでタイトルからハッピーエンドだと思ったかというと、彼氏彼女の彼女を「ガールフレンド」というように、女同士なら彼女2人で複数形になると考えたから。