カウンセリング、それは人の背を押す手助け - HELP!



HELP!/上野愛(Amazon)


鬱。
近年よく耳にする症状で、私の周りでも心療内科のお世話になっているorなっていた友人は何人かいます。
鬱は誰でもなり得る症状なんですよね。


かくいう私も数年前に心療内科に通ってカウンセリングを受けていたことがあります。
症状としては軽い鬱だったと思う。
その時は、逃げ出したいという気持ちから「自分は欝だ」と思い込もうとしていた節がないとは言い切れませんが、身体の方に明らかな異常が現われていたので、間違いなく病んでたんだろうな、と。
あの時は辛かった。
具体的には勃起しなくなってました。今は文字通り元気です。
笑い話にできる程度にはなってるから精神的にも大丈夫になっているんでしょう。


自分の場合は「欝だから仕方ない、逃げても仕方ない」と正当化しようとしていた部分があって、同じような感じで”偽鬱”っぽい状態の人もいるかと思います。
わかることもあるけど、心の問題だから外からわからないんですよね。
同様に、本当に精神的に参っていても他人どころか自分ですらわからないこともあります。認めたくないっていうのもあるかもしれません。



まぁ、自分は専門的な知識もないので漫画と関係ないことはこれくらいにして。


病院・医療ものは漫画の中でも一大ジャンルです。
大人をターゲットにした青年誌や女性誌には多く見受けられますし、少年誌でも多く連載されています。
その分野は多岐に渡り、中にはカウンセリング、心の病をテーマにした作品もあります。
コーラスに連載されていた「HELP!」は心理カウンセラーの漫画です。


といっても、主人公はかなりカウンセラーとしては異色で、子供のクライアントと本気で遊ぶ女性です。それも外で。
主人公の國分真理、通称・ラポちゃんは「自分らしく」「本気で」クライアントと向き合うカウンセラーなんです。
”ラポちゃん”は”ラポール”の略で、クライアントとカウンセラーの信頼関係を指す言葉とのこと。


面白いのが、ラポちゃんは元々は働いている「COCORO・HELP」のクライアントで、代表者の御堂のカウンセリングで救われていること。
カウンセリングに通う中でカウンセラーの資格を取り、御堂の勧めでカウンセラーになったという。
だから、クライアントの”辛さ”はわかる。
個人的には悩みや精神的な辛さは、原因も症状も人それぞれで突き詰めたところではわかりっこないと思うんですが、辛いことだけは確かにわかることだと思います。
その辛さや苦しみ・悩みが、どういったものなのか、原因は何にあるかといったことはコミュニケーションをとっていくことでしかわからないと思うんですよ。
ラポちゃんのコミュニケーションはカウンセラーとして企画外ではあるけど、友達のような壁のない接し方で相手の心を解きほぐしていきます。

”問題だらけのおまえにしかできないカウンセリングをすればいい”
おまえにはおまえの問題がある
痛みがある 悩みがある
だけど それはおまえの宝だ
痛みがあるから 傷があるから
だから おまえには人の痛みがわかるだろ?


御堂のこの言葉が好きでして、辛い経験も自分次第で無駄になんかならないんですよね。
もちろん、”ちゃんとした”カウンセリングで人を救いたいと思うカウンセラーとラポちゃんは衝突もしますし、合わないクライアントもいます。
でも、御堂は

好きか嫌いか
合うか合わないか
やり方なんてどうでもいい
相手が心を開いてくれれば方法なんてなんでもいい

って考え方で、それはある意味で真理なんだろうと思わずにはいられません。
救うんじゃなくて、立ち上がる手助けをすること。それしかできない。
最終的には自分で立ち上がるしかないんだから。



カウンセラーをしているものの、ラポちゃんの悩みは根本的なところでは解決しておらず、御堂のかける言葉は彼女のカウンセリングな意味合いもあります。
クライアントの心を開きつつ、自分の抱えている過去を思い出されるクライアントに引っ張られて仕事ができなくなり、その過去を職場の仲間に曝け出す展開は面白い。


連載は不定期で毎回楽しみにしていたんですが、続きが載らないと思った単行本ら発売で、巻数表記はなし。
これは続きはないのかなぁ。
これはこれでひとつの答えを出してこれからも向き合っていくという形ではあるけど、まだまだ途中な感じなので是非続いて欲しいところです。


HELP! (クイーンズコミックス)
上野 愛
集英社
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