古本と木造の建物の懐かしさ溢れる、不思議な本バカ漫画 - くおんの森(1)



くおんの森(1)/釣巻和(Amazon)
雨花(作者サイト)


愛書家は本に囲まれて生活したいものです。
そりゃあもう、可能なら一日中本を読んでいたい。
本は当然本棚からあふれ出して床に積まれ、部屋は寝るスペース以外は本で埋まり、置く場所などとうに無くとも本は増え続ける。
寝ている時と仕事している時以外は本を読んでいたいし、本を片手に食事して、風呂やトイレにも持ち込む。
安全なら歩きながらでも読みたい。電車通勤の頃は読めたけど、自動車通勤になってからは本を読めないから辛い。
これが愛書家、書痴というものでしょう。
あれ、自分のことじゃん。今は漫画ばっかりだけど余裕があれば活字も読みたいよ。


愛書家、書痴、愛書狂ともなれば、もう本に囲まれていないと落ち着かないほどです。
理想の家は図書館みたいな書庫がある家なのは揺るぎません。
そんな本好きにとって「くおんの森」の舞台はたまらない町なのです。
”森”は”本”みっつの造語な漢字のがそそります。



主人公・魚住遊紙が越してきた、亡くなった祖父が住んでいた家は本好きが住む町にありました。
その町・栞ヶ浜は老若男女問わず道行く人は本を読み、商店街はほとんどが古書店と片手で食べれるパン屋という町。
遊紙が通うことになる栞ヶ浜学園は公共利用できる図書館を有しています。
なんという、住みたくなる町でしょうか。本好きには堪らない。


遊紙は転入前に訪れた栞ヶ浜学園で、紙魚(「くおんの森」では本の文字を食べる魚の妖)に寄生されてしまい、それとともに現ではない”くおんの森”と呼ばれる場所に入ってしまいます。
本がたくさんある”くおんの森”で、”本と人を守る者”となのる子供・森人と、執事風の老人・羊さん、あとは猫のブゥさんに出会います。
森人達曰く、紙魚に選ばれたのは遊紙の祖父以来2人目だそうな。


紙魚が身体の中にいることによって、本を大量に読まなくてはならなくなった遊紙ですが、遊紙は一度読んだ本の内容を一文一句漏らさず覚える能力があることで食い尽くされることなく生活できています。
一度読んだ内容を忘れない能力、なんて羨ましいんだ。
同時に、普通の視力が異常によくなり人間が見れないものを見れるようになり、現以外のものを実体化してしまう能力が付いたことでトラブルが起こりそうな感じ。



本と木の匂いが漂いそうな空間が「くおんの森」の世界を全体的に覆っています。
古い建物に、古い本。
学園内の図書館はさらに古い空間で、”くおんの森”も神秘的ながら懐かしさとそれを越えた古さを感じさせます。
薄暗くも懐かしい雰囲気は、不思議な出来事が起こっていても、何故か安心できる印象を受けるのはやはり本が大量にあるからなのかな。
古本には不思議な魅力があり、それは創作物の中の古本でも変わらないものだと思います。