数学もわかりやすい、理系恋愛コミカライズ - 数学ガール(上)
数学ガール(上)/日坂水柯 原作:結城浩(Amazon)
日坂水柯(ヒサカミカ)日々ヲ記ス(作者サイト)
結城浩 - The Essence of Programming (プログラミングのエッセンス)(原作者サイト)
工業系や医療系、某農大漫画などテーマが理系の作品は数あれど、ここまで数学をメインに据えた作品は見たことがありませんでした。
誌面に数式が溢れている漫画の新鮮さよ。
それでいて恋愛漫画なんですよね。オビの「数学×青春」がしっくりくる。
数学”ガール”
「数学ガール」は、数学クイズや数学の話をするミルカさんと「僕」、「僕」に数学を教えて貰っている後輩のテトラちゃんのお話です。
「僕」はミルカさんが気になっていて、テトラちゃんは「僕」が好きだという三角関係。
それぞれ相手に気持ちを伝えるようなことはしていない関係で、ほとんど数学の話しかしていません。
でもそれが良いんだな。
高校生ですもの、学校内で話す内容として相手の得意な教科の話は当たり障りがないどころか興味のある話題なので話が途切れることもなく、話が盛り上がる喜びがあります。
時折、数学以外の話題になることも含めて、青春を感じますね。
テトラちゃんにとってはこんな感じで、苦手な数学を教えて貰えて好きな人と話せることなんですが、ミルカさんと「僕」にとっての数学となるともう趣味の話であり、趣味の話なので別種の楽しさを感じていることでしょう。
その実、数学の内容も考え方も一段上で、その深さにテトラちゃんは嫉妬のような気遅れのようなものを感じている、と。話題の深さが関係の深さに見えてしまっても無理はありません。
イメージされる典型的な例として「理系はコミュニケーションが苦手」というものがある気がするのですが、コミュニケーション能力に関しては、テトラちゃん>「僕」>ミルカさんという具合になっているのが面白いところ。
「僕」は固有名が「僕」なくらい主人公なのでモノローグから心情が描かれるのですが、ミルカさんはもう何を考えているのかわからない。テトラちゃんにいきなりした仕打ちといい、本当何を考えているかわからなくて怖いくらい。
でも数学の話になると饒舌なんですよね。
数学は言葉が大事、人間関係も言葉が大事。
人懐こくてかわいいテトラちゃんと、クールでミステリアスなミルカさんの二人が対比的です。
理系女子はこうなくては!
”数学”ガール
数学部分に関しては、彼らが高校生なこともあって高校数学で懐かしい。
理系だった人には懐かしく、文系だった人にも少なくともテトラちゃんのやっている方には見覚えがあることでしょう。
数学について話しているのがほとんどですが、数学の話を通じて気持ちが乗っかっているところがあるので数学部分はわからなくとも問題なく楽しめると思います。
とはいえ、「数学ガール」の数学部分の懐かしさ、わかりやすさは楽しい。
人に説明している・人と会話をしているからか、妙にわかりやすいんですよ。
段階的に分解して、実際にノートに書いたものと照らし合わせて、話し言葉で説明しているとこれほどわかりやすいとは。
自分は数3が苦手だった人なんですが、倍角公式のところはわかりやすいと感じました。
教科書もこれくらいくだけろとは言いませんが、こういう漫画の参考書だとわかりやすいでしょうね。ページ数がものすごいことになりそうですが。
例によって原作は未読ですが、原作で数式がどういう風に表記されているかすごく気になります。
面白かったから読んでみたい。
もちろん、漫画版の続きも、ね。