恋愛と、ブラック企業での仕事の二本柱が面白さ - 午前3時の無法地帯(1)



午前3時の無法地帯(1)/ねむようこ(Amazon)


フィールヤングで「午前3時の無法地帯」、まんがタイムラブリーで「ペンとチョコレート」を連載中のねむようこ先生の初単行本が発売ですよ。
午前3時の無法地帯」の1巻です。
個人的に注目している作家さんの1人で、フィーヤン本誌での扱いを見ると雑誌としてもプッシュしている作家さんみたいです。私が注目しているから目立って見えてるのでなければ。



主人公のももこがデザインの専門学校を卒業してイラストレーター志望で入社したデザイン会社は、実はパチンコ専門のデザイン事務所でした。
イラストレーターからは程遠い仕事をしている職場は、見事なブラック企業ぶり。
午前3時に全員出社中のフル稼働、徹夜に泊まり込みは当たり前、4日も帰ってないんだぜと言う先輩社員は流し台で髪を洗っています。てか、シャンプーとリンスはそこに常備。
労働基準法?何それ、おいしいの?とでも聞こえてきそうな、そんな職場。
社員も、集中力を高めるためかトランクスで徘徊する男性社員(さらに進むと下半身丸出し)や、元ヤンか元暴走族だろうといわんばかりの営業といった、変態・変人も。
もちろん普通の人もいますが…。
あ、ギャグ漫画じゃないですよ。


こんな環境ですもの、志望していた仕事と違う騙された感もあって、辞めたくなるのも自然です。
そうして、数日と経たぬうちに同期の新入社員は逃げてしまい、そのしわ寄せでさらに忙しくなるというスパイラル。
彼氏の家に行くのも深夜で、終電すぎてて自宅に帰れないから結果的に寝に行くだけ。



うん、相当にブラック企業です。労働基準監督署に報告したら一発でアウトでしょう。
でも程度の差こそあれ、どこの会社でも通ずるところはある気はします。納期や人員的な要因などがあって、多忙にならばやるしかない。
まぁ、限度はありますけどね。常時そんな状態でヒマもなかったら、体を壊すのが先か精神を病むのが先かということになってしまう。
ももこが勤める会社は限度を突破しているのです。
漫画だから誇張されているとはいえ、これはキツイわぁ。

仕事が忙しけりゃ、恋もズレる

で、そんな忙しい会社で学生の彼氏の部屋に寝に行くような生活が続けば、「俺じゃなくてベッドに会いに来てんじゃん」とも小言言われるのも無理はありません。
それでも彼氏の浮気現場を目撃してしまえばショックですし、ももこから連絡できずに音信不通に陥る、と。
ももこと彼氏の顛末を含めて、とりあえず学生の彼氏は一回就職してからももこに文句言え、てくらいイライラします。浮気する理由にはならないっての。


ももこが彼氏と別れるのは第1話のことで、次の恋に移っていくのですが、いい感じに男性陣がアレだったりイライラする男だったりします。今月号の話を含めて、そう思う。
学生時代からの恋人に浮気されて別れて、次の恋愛は…だったりと二段構えで恋愛的にツライ展開なのが盛り上げどころではあります。
女性誌の恋愛は一癖二癖、一捻りも二捻りもあって面白いです。
相手が変わったり、浮気や不倫がザラだったりしますからね。読んでいてイライラしたり胃が痛くなったりもしますが、そういった心情にさせられるのも含めて、面白いものは面白い。

仕事、ナメんな

歳を取るにつれて感じるんですが、青年誌や女性誌のお仕事ものの漫画が非常に面白い。
就職したから、対象年齢層に入ったからなんですが、すごく面白い。
女性誌の漫画においては恋愛だけでなく、仕事が占める割合も大きくて、恋愛と仕事の二本柱で成り立っている作品が多いんですね。
女性誌は恋愛にややウェイトが載りますが、その辺のバランスやさじ加減が良いと魅力が増すわけです。


午前3時の無法地帯」もやはり仕事部分も面白さで、フラれたり多忙すぎてデートができなくなったりでヘコんでも、仕事に支障をきたして良い理由にはなりません。
常々辞めたいと思っていても、仕事の手を抜いて良いわけがなく、ミスすればクライアントや多数の他の人間に迷惑をかけてしまう。
机に忍ばせていた辞表を、本気でないものの「こんな会社辞めてやる」と言った時に取り上げられてしまい、挙動不審になる話は”こんな会社”でも働いている人がいるということを強調した話で感じさせるところがあります。
拘束時間が長くてキツイ仕事でも、楽しいならなかなか辞めれないよね。
変な人の多い会社だけど、その変な人がその楽しさの一端を担っているのがまた。



1巻はどちらかというと仕事にウェイトが置かれていて、2巻分に当たる連載中の話は恋愛がメインです。
ツライ仕事の合間に癒しとなる恋愛が、実は癒しではなくて目が離せません。


午前3時の無法地帯 1 (1) (Feelコミックス) (Feelコミックス)
ねむ ようこ
祥伝社
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