すれ違いとふれ合いを繰り返す、政略結婚百合 - flower*flower(1)



flower*flower(1)/石見翔子(Amazon)
183.5(作者サイト)


石見翔子先生の非4コマ漫画で初の単行本であるところの「flower*flower」1巻が発売ですよ。
ファンタジー世界での、政略結婚百合です。


政略結婚で百合ってなんやねん、とお思いかと存じますが、そうなのだから仕方ない。
勘違い、すれ違い、文化の違いがあって成立しているファンタジー百合なのです。



真伽の国に友好の証として嫁いできた、アディンガーラ国の王女・ニナ。
彼女の婚約者で第一皇子の蒼は、女の姿に女言葉の男性…要するに女装、まぁそういう人でした。
婚約者がいきなり女装してたとあっては、さすがにアレでニナは蒼との結婚を拒否。
隣にいた第二皇子の朱と結婚することに。


しかし…男の子に見えた朱は実は女の子だったのです。
しかも、結婚してからというもの朱は自分が女だと打ち明けるタイミングや勇気に恵まれず、ニナに男だと思われたまま。
政略結婚ですが普通の男子と結婚していると思い込んでいるニナと、それを打ち明けられず、でもニナが好きな朱のお話というわけです。



そういう性別の誤認という前提もさることながら、国のために仕方なく嫁いできたニナの友好的でない態度など、朱とニナの間には様々な溝があってそれが面白さになっています。
結婚したからといって事を早急に進めず、お互いを知ることから、恋することから始めようと言う朱に、ニナの心は少しずつ解きほぐされていき、それにつれて壁やハードルを越えていく形になっているのですね。
肝心の性別のことは中々打ち明けられませんが。



壁や溝になっていることは思いのほか多いのがまた面白いんですよ。
例えるなら中東の国のイメージで、そこの王族のところに欧州の王女が嫁いできたという感じで、もう文化の違いが大きいのなんの。
朱もニナもお互いの国のことをあまり知りません。
当然、ニナは真伽が同性婚が可能なことも知りません。王族に限った話かもしれないけど、一夫多妻のことも。
だから、少し朱のことが好きになったニナが臣下の「2人の間に子供はできませんもの」の言葉に取り乱すのも無理はなく、そういった言葉などの細かいことでも心揺さぶられるのが朱に対する気持ちを表わしていて良いのです。


文化の違いだけでなく、ニナ自身が素晴らしくツンデレなのも2人の距離が中々縮まらない要因です。
気遣って好きでいてくれる朱の優しさや愛情が、見知らぬ国に嫁いで寂しいニナの心に響き、少しだけ朱を受け入れる展開はお約束ともいえますが、やはり良いものですね。
すぐに元のつれない態度に戻ってしまうのも魅力といえましょう。



連載の方では性別バレしてすぐの状態で、先が気になる展開をしています。
兄の蒼の何かを計画している思わせぶりな言葉など、気になる要素も多いですし。
既刊で続きが中々読めないのがヤキモキ。

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石見翔子先生のサイト。


flower*flower 1 (1) (IDコミックス 百合姫コミックス)
石見 翔子
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おすすめ度の平均: 5.0
5 ヘタレ×ツンデレだけではない、複雑な百合色恋模様