子供受けは良くなさそうな気がするけど、漫画好きには面白いぜ、バクマン。



バクマン。(1)/小畑健 原作:大場つぐみ(Amazon)


原作・大場つぐみ先生、作画・小畑健先生のデスノコンビの新作はマンガ家、しかも作中でジャンプ編集部がかなり絡んでくるとあっては漫画オタにとって注目せざるを得ないわけです。
事実、漫画好きが集まる落ち着いた飲み会ではほぼ話題に上っています。
もちろん、「ジャンプで連載している、”ジャンプ編集部が出てくるマンガ家漫画”」の設定だけでは毎週楽しみにし続ける作品に成り得るはずもなくて、こうも語られるくらい面白いんですよ。



バクマン。」は真城最高(通称・サイコー)と高木秋人(通称・シュージン)がコンビを組んでマンガ家を目指す漫画です。
単にマンガ家を目指すのではなく、アニメ化を狙っています。それも18歳までに。1巻段階で、2人は中学生。
そんなに早くアニメ化を目指すのは、サイコーが両想いだけど付き合ってない女子の亜豆と結婚する約束をしているから。
なんだそのロマンチスト設定…!


それにより、「話さない。2人で会いもしない。コミュニケーションはメールのみ」という約束ながら亜豆は圧倒的な存在感を放っているのです。
最終目標が結婚で、亜豆が手が届きそうながら偶像化しているので、サイコーと亜豆の絡みがあまりなくとも恋愛要素はヒシヒシと感じる上に、恋愛的なイベントの分を漫画方面に費やせる形になっているのでしょう。
これは結構凄いと思う。

ジャンプだから、ジャンプでしかできないマンガ家漫画

んで、漫画ですがこれがジャンプを読んできた人には面白すぎるんですよ。
長く読んできていれば長い程、深く読んでいれば深い程、面白く感じるはず。


シュージンはマンガ家を目指しているものの素人で、サイコーは今は亡きおじさんが短期間でデビューしたマンガ家だったので色々と話を聞いており、当初はネームから何から説明する形を取っています。
ふむふむ、自分が小学生くらいの頃はぱふなんかで用語を知ったけど、こういうモノに出会って漫画に興味を持つんだよなぁ。
ジャンプは漫画を描く子供を育てたいのだな…と思いきや、1話目の冒頭で「マンガ家は博打打ち」とか「漫画で食っていけるのは十万人に一人」とか言っているので、未来のマンガ家を増やそうとしているとは到底思えません。
覚悟のある奴だけジャンプに持ち込みしに来いと言っているようにも見えますし、対象読者は大人なのかもとも思えます。
今のドライな子供(にやさぐれた大人からは見える)は「マンガ家にはなりたくない」って思うんじゃなかろうか。



というのも、1巻ではあまり出ていませんが編集部絡みの話がぶっちゃけすぎなんですよね。
もちろん漫画なのでフィクションですが、ジャンプ連載でジャンプの話はこれが真実と取られてもおかしくないですし、そう思われるのも想定しているはず。
「今まで色々と言われているし、もう話せるところまでは出しちゃえ」くらいの勢いを感じます。
10週打ち切りのあるアンケートシステムや、王道に邪道、担当編集の話などなど、漫画好きには堪らないわけですよ。


漫画を読む側には凄く面白いのですが、友人の作家さんはあまり好きではなかったり、某所である作家さんが主人公に感情移入できないと仰ってたりしたので賛否両論はありそうです。
確かに「漫画が好きだからマンガ家になるぜ!」というよりも富と名声、結婚が目標で計算高いですしね。
でも、漫画が好きな気持ちは根底にありますし、その生々しい理由と計算と努力で突き進む秀才型主人公なのが面白いと感じています。ライバルは天才型の新妻エイジ
亜豆の母親と話して、おじさんの想いを受け継ぐかのように決意を新たにするところは熱いですし。



何はともあれ、先の展開を予想するのも楽しく話題に事欠かない作品であるのは確かで、それだけにやはり注目作なんですよね。
飲み会の度に「ぼくの考えたバクマン。」な話になるのは面白い。
「サイコーとシュージンが一度はケンカ別れする」とか、「2人が新妻エイジのアシになる」とか、「エイジの作品がアニメ化して亜豆が主役に抜擢され、(中略)寝取られる」とか。
毎週楽しみにしています。