2008年の江戸は心地良いよ - ちょっと江戸まで(1)
津田雅美先生の新作は江戸漫画なんですが、単なる江戸を舞台にした漫画じゃなくて”2008年の江戸時代”という設定。
それだけ聞くとパソコンやら文明の利器があるハイテク江戸かと思うかもしれませんが、そういうことも特になくて、普通に読んでいると時代設定を忘れてしまうくらいに自然に江戸なのです。
主人公の桜井そうびは大身旗本の桜井貴晄の腹違いの妹で、父の今際の際に存在が明かされた隠し子。
父本人も会ったことがなく、もちろんそうびも親のことはよく知らず、それでも妾の子11人全員の行く先の世話をした貴晄は放っておくことなどできず、結局迎えに行った家臣が連れ帰って一緒に住むことに。
そしたら、男の子だと思っていたそうびは実は女の子でしたとさ。
無表情同士の兄弟で、感情を表に出すことが苦手なだけで情がないわけではなく、その感情が伝わった時の幸福感といったら、さすが津田先生は見事です。
妹思いとお兄ちゃんっ子な兄弟で微笑ましい。
兄弟間だけでなく屋敷の家庭環境(?)も微笑ましいのですが、メインとなる環境である同年代の関係も微笑ましいのです。
そうびが通うことになった中学校に、何故か御三家の水戸廸聖(みちさと)が転校してきます。
廸聖に気に入られたそうびですが、身分の高い人とトラブルにならないようにと思って結果拒絶。それが却って廸聖と父親に気に入られて仲良くなります。
廸聖がそうびよりちっこくて、髪が長いものの結っておらず、キラキラと愛らしい上にハートマークまで飛び交う御仁で。
よく泣いて頬を真赤にしている廸聖は女の子にしか見えない。
そうびの方が男前で男の子に見えるので、本来の性別とは逆転したカップルとして愛らしく面白いです。
それぞれに男らしいカッコ良さ、女の子らしい可愛らしさを時折見せ、普段からのギャップもあって引き立ってます。
2008年という時代設定を忘れるくらいの江戸ですが、普通にララとか売ってたり、セブンイレブンやハーゲンダッツ(全部漢字ひらがな表記)もあって、街並みは感覚的にはすごく身近。
そのせいか「ちょっと江戸まで(行ってくるor行こう)」という気安さが作品の雰囲気に繋がっていてすごく心地良い。
そうびら子供達が可愛く、作品雰囲気が子供達に優しい感じがします。
江戸時代の単位やらがわかりにくいと津田先生は思ってらっしゃったようで、それが「ちょっと江戸まで」ではスルーっと頭に入るようにと描かれているそうです。
江戸時代と実際の現在の東京とを照らし合わせて用語が解説されるので、土地感覚なんかがわかりやすい。
漫画で色々と覚えるっていうのは重要なことですものね。
2008年設定ですがその辺はキチッとしていると思います。
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