純粋さに触れて、弱さをも見せれるようになる生徒×教師百合「純水アドレッセンス」



純水アドレッセンス/かずまこを(Amazon)
SeFresh(作者サイト)


ななおと松本のシリーズを収録した、かずまこを先生の初単行本「純水アドレッセンス」。
素晴らしく素晴らしい百合です。
日本語が変ですが、それくらい素晴らしいということで。
百合姫本誌に掲載された時に感想も書かずにはいられないくらいだったのですが、まとめて読むと改めて良いですね。
松本のセリフじゃないけど、キュン死しそうになりました。



ななおと松本のシリーズは、保険委員のななおと養護教諭の松本の恋のお話です。
生徒×教師、子供×大人は王道のひとつといえばそうなんですが、年の差カップルと百合の魅力が相まってかなりキュンとするお話になっています。


何が良いって、ななおが可愛いんですよ。
教師である松本を「松本」と呼び(他の教師も呼び捨て)、「嫌いなのか」といった感じのぶっきらぼうな物言いながら、中身はとてつもなくピュアで、初めての恋のその胸を締め付ける切なさに戸惑ったりする女の子なのです。
ななおのピュアさにやられて、これまでに経験したことのない恋に落ちた松本と両想いになる「夏窓シンドローム」は幸福感たっぷり。
ななおは素直でクール、そこからさらに純粋さを増したタイプの女の子で、その可愛さは付き合ってから真価を発揮すると言う他ありません。
さすがに教師と生徒の関係なので人目を憚ってはいるものの、大好きな松本に対して素直に「好き」と言い、一山乗り越えた後の書き下ろしでは懐いて懐いて仕方のない猫のような愛らしさで松本をメロメロにするのです。可愛すぎる。



物語としては、教師と生徒、大人と子供の恋愛ということで、年の差で悩む展開は外せません。
性別に関しては「好き合っていれば特に問題ではない」と言わんばかりにあまり問題になっていませんが、年齢差に関しては悩む悩む。
年齢差に加えて、同性であることも問題にしていたら多分くどくなっていたと思うのでこれで良かったんじゃないかと思います。
「松本に釣り合うように早く大人にならなくては」と焦るななおと、年上だから自制しななおの将来の邪魔になってはいけないと自分の気持ちを抑える松本の、二人の気持ちのすれ違いがキモ。
焦るあまり周りが見えなくなっていたり、大人として弱さを見せれないのはそれだけ本気で好きだからなんですよね。
本音をぶつけ合ってすれ違いをなくしていく過程と、そのラストは本当に胸がキュンとします。
年下のななおの純粋な気持ちに、大人という鎧を剥がされて本音をぶつけるようになっていく松本が良いですね。
最終話の、ななおに弱さを見せる松本の場面が好きで好きで。だからウチでは”生徒×教師”表記にしてます。




1話目にあたる「夏窓シンドローム」は当初読切だったので、そこで両想いになるように作られています。
百合やBLの同性の恋愛ものは”くっつくまで”がひとつの山でそこで完結するものも多いのですが、恋愛的な意味ではそこから先がオイシイのですよね。
なので、付き合い始めてからを教師と生徒の年齢差の障害で描いていく本作は、付き合っていても揺さぶられる面白さがあります。
だからハッピーエンドにより幸福感を感じるのです。


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