ジャンプらしい医療漫画「アスクレピオス」



アスクレピオス(1)/内水融(Amazon)


内水融先生は読切がかなり面白いものの連載では低迷してしまっているイメージがあるのですが、現在連載中の「アスクレピオス」も掲載順はかなり芳しくありません。
個人的には面白いですし、好きなんだけどなぁ。
連載というものは厳しく、特にジャンプだと尚更。
少年誌たるジャンプでは、子供に受けないと打ち切りの危機にさらされることはしばしばで、でもそれが雑誌としてのジャンプの面白さのひとつでもあります。漫画好きのちょっとスレた楽しみ方ですけども。
というわけで「アスクレピオス」、万人受けはしそうにないですが好きです。



ギリシア神話の名医・アスクレピオスの名を冠するこの漫画は医療を扱った漫画です。
とはいえ、そこはジャンプ。
サンデーとマガジンには医療漫画が連載されているのですが、ジャンプで医療漫画をやるとしたらこうだ!という感じがビシビシします。


舞台はある時代のヨーロッパ、”切って治す医療”が異端視されている時代。
大怪我は肢体切断(結果として欠損)、あとは多分瀉血とかで処置するのが当たり前の世の中で、現代医学に通ずる施術をしてきた一族のバズ・メディル・アスクレピオスが主人公。
ただし、異端として追われるのを恐れてコソコソと逃げ回っていた主人公。うん、ジャンプ主人公らしくない。
現在の外科医がしている医療をしている彼は、”切り裂き魔”として指名手配されています。切り裂きジャックが医者だった説もあるので、それも彷彿とさせますね。


控えめな性格の彼の前に現れたのが、メディル家に従者として仕えるテレスフォス家の少女・ロザリィ。
小さな身体に脅威の怪力の彼女ははつらつとした性格で、ロザリィの方が主人公っぽくもあります。
というか、2人で主人公な気もします。
平時はロザリィ動き回って活躍し、医療関係のイベントになるとバズの見せ場になる感じ。
バズが成長していくにつれて、平常時でも彼の印象が強くなっていく…そんな構成だったのかも、と今週のジャンプでの姿を見て思ったのでした。




異端者として教会、異端を狩る聖騎士に追われ、それをロザリィが撃退するもののバトル漫画ではありません。
あくまで医療をテーマとした漫画で、時代を何十年と先に進んだ医術で人を救い、それを持って教会と戦う外科医の漫画です。
普段は頼りないバズが手術をする場面は、バトル漫画における必殺技に相当し、逆境においても諦めない姿はまさに少年漫画。諦めたら本気で死人が出ますし。
バズにとって初めての手術の、その患者がロザリィだったのは、これから供に旅をするパートナーとの契約とバズ自身の決意ともいえるもので、すごく面白い第1話になっています。


ロザリィが結構可愛くて、幼い容姿に怪力ってだけである種のツボであるものの、「〜ッス」という話し方が玉に致命傷とはいかないまでもちょいと引っかかっていたのですが、過去の出来事を読んでからはむしろ良いじゃないですか!いじらしいじゃないですか!
1巻には収録されていませんが、こういう過去設定の出すタイミングが週刊少年誌の難しいところなのかな、とも思ったものです。
それにしても、小さい身体に裾のモコモコしたスカートに網タイツで暴れまわる姿が清々しい。



それにしてもジャンプ本誌での掲載順が低迷していますが、楽しんで読んでいきたいところですよ。